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同じお茶の味
昨日は気付くと朝で、起きたら頭が痛かった。どこかわからなくて周りを見回すと、ベッドにスウェット姿のミユがいた。
「あ、タカトシ君起きたね~おはよー!」
「え……? ミユさん…‥?」
僕の黒いスキニージーンズのベルトは緩められ、ボタンとチャックが開いている。
え? これヤバくないか? 飲んでるからユウジ先輩が? いやちょっと待てここは女の人の部屋なわけでえっと……まさか俺酔ってミユさんをどうこう……⁈
一人でテンパってチャックを上げていると、ミユが話し出した。
「ケチャップの話したらタッ君寝込んじゃってさ、それからどうするってなって、一番近い私んちに来たの。さっきまでユウジもいたよ。雑魚寝でゴメンね?」
良かった、ユウジ先輩もいたのか。いや、嬉しいような、ちょっと複雑なような。
「いえ……すみません、ご迷惑をかけてしまって」
「大学生あるあるだよ! アオハルしてるじゃん?」
ケラケラ笑いながら、ベッドからミユは抜け出して、お茶淹れるね、とキッチンへ向かった。
「頭痛い?水飲む?」
「はい、欲しいです」
初めての二日酔い。ペットボトルの冷たい水。好きな人のすっぴん。
水を飲み壁に寄り掛かりながら、ミユが小さなやかんに水を入れ、火にかけるのを見ていた。
「あ、そうだ、身体気持ち悪いならシャワー浴びる? 歯ブラシもあるよ?」
そういうのに慣れてる人なんだろうか。そうは見えないけど。気を利かせてくれているのか?これは。確かに酒臭い自分が気になる。
「いいんですか?」
「いいよー? どうぞどうぞ、こっちだよ」
そう言ってパタパタと浴室に連れて行かれた。シャワーはこうやって使って、バスタオルはこれ、はい歯ブラシ。と説明され、物を渡され、僕はシャワーを浴びた。
彼女のシャンプーが並ぶその中に、男物のシャンプーが置いてあったのを見て、僕は思い切り打ちのめされた。
なんだよ、遊んでる人なのか。そんな風に見えないのにな。彼氏がいたら泊めないだろうし。まさかユウジ先輩が彼氏なのかなあ。どっちにしたって、僕は眼中にないんだな。
悔しいから僕はミユのシャンプーを使った。彼女の匂いがするシャンプー。泡が目に入って痛い。痛いだけだ。泡にまみれながら、僕は少し泣いた。
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