同じお茶の味

1/2
前へ
/15ページ
次へ

同じお茶の味

 昨日は気付くと朝で、起きたら頭が痛かった。どこかわからなくて周りを見回すと、ベッドにスウェット姿のミユがいた。 「あ、タカトシ君起きたね~おはよー!」 「え……? ミユさん…‥?」  僕の黒いスキニージーンズのベルトは緩められ、ボタンとチャックが開いている。  え? これヤバくないか? 飲んでるからユウジ先輩が? いやちょっと待てここは女の人の部屋なわけでえっと……まさか俺酔ってミユさんをどうこう……⁈  一人でテンパってチャックを上げていると、ミユが話し出した。 「ケチャップの話したらタッ君寝込んじゃってさ、それからどうするってなって、一番近い私んちに来たの。さっきまでユウジもいたよ。雑魚寝でゴメンね?」  良かった、ユウジ先輩もいたのか。いや、嬉しいような、ちょっと複雑なような。 「いえ……すみません、ご迷惑をかけてしまって」 「大学生あるあるだよ! アオハルしてるじゃん?」  ケラケラ笑いながら、ベッドからミユは抜け出して、お茶淹れるね、とキッチンへ向かった。 「頭痛い?水飲む?」 「はい、欲しいです」  初めての二日酔い。ペットボトルの冷たい水。好きな人のすっぴん。  水を飲み壁に寄り掛かりながら、ミユが小さなやかんに水を入れ、火にかけるのを見ていた。 「あ、そうだ、身体気持ち悪いならシャワー浴びる? 歯ブラシもあるよ?」 そういうのに慣れてる人なんだろうか。そうは見えないけど。気を利かせてくれているのか?これは。確かに酒臭い自分が気になる。 「いいんですか?」 「いいよー? どうぞどうぞ、こっちだよ」  そう言ってパタパタと浴室に連れて行かれた。シャワーはこうやって使って、バスタオルはこれ、はい歯ブラシ。と説明され、物を渡され、僕はシャワーを浴びた。  彼女のシャンプーが並ぶその中に、男物のシャンプーが置いてあったのを見て、僕は思い切り打ちのめされた。  なんだよ、遊んでる人なのか。そんな風に見えないのにな。彼氏がいたら泊めないだろうし。まさかユウジ先輩が彼氏なのかなあ。どっちにしたって、僕は眼中にないんだな。  悔しいから僕はミユのシャンプーを使った。彼女の匂いがするシャンプー。泡が目に入って痛い。痛いだけだ。泡にまみれながら、僕は少し泣いた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加