文学少女

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文学少女

. . . 当時の私は大学の文学部を出て、希望していた大手の出版社に春、就職したばかりだった。 昔から読書が好きで、図書館の窓際が私の特等席だった。 ランドセルの中にはいつも図書館で借りた本が入っていて、毎年変わる担任の先生よりも図書館のおばちゃんと別れがたくて卒業式で泣いた。 大学の文学部に入ってからもそれは変わらず文学少女を続けていたのだけれど、ただあまりにもこれではいけないと青春を桜花するための一歩にメガネをコンタクトに変えてから、一応彼氏も出来て、初めても済ませて、高校時代もこうしていれば彼氏の1人出来たかもしれないと変な後悔をしたりした。 そして卒業論文では、やはり太宰を書きたかった。 私ごときにあの大先生の何を語れるかと思ったけれど、どうしても本に生きてきた人間として太宰だけは、大学時代に極めておきたかった。 ゼミもまるで面白くない文学研究のゼミで朝から晩までひたすらに純文学を読み漁り、この時期生まれてはじめて字に酔った。 それでも好きなものというのは何をどうしても好きで。 一応、卒業論文は2位ということで卒業式で表彰され、それを父も母も喜び3人で写真を取り、人生最後の学生期間である大学生活を終えた。 ただこの2位というのが、まるで私の人生を表す順位のようだなんて。 あの時の私は考えもしなかった。
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