東京

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. . . 人間というのは不思議なもので、思い込む日々を続けると、さまざまな事が気にならなくなる。 自分の思いを無視して生きなきゃいけないと心にブレーキをかけながら過ごす毎日は、徐々に私の心を硬く、全く柔らかみのないものへと変えていった。 それはまるで薄い陶器に例えてみたくなる。 外側だけが硬く、中にはポッカリと空洞がある感じ。 それでいて子供が紙粘土で作った工作みたいに雑な仕上がりで、端から徐々に乾いてパリパリと固まってきている未完成な感じもした。 電話の一本も来ない生活。 奥さんと居続ける彼。 あまりに1人だと感じる夜。 彼と離れるべきなのかと頭をよぎった事もあった。 だけど久しぶりに彼に会えると、やっぱり愛しさが溢れ落ちそうなほど込み上げて、彼の全てを満たしてあげたいと我を忘れた。 満たされなかった欲を当てつけるように私を抱く彼に、私は願った。 お願い。もっと愛を注いで。 もういらないって私が笑うくらいに。 あなたと一つになりたいの。 肉体も精神も全部。 でもどうやっても1つになりきる事ができないもどかしさは消えなくて、ただ彼を感じた。 この年の春から夏までは、ずっとこんな日々だった。 会えなくなると言われれば彼から離れ、1ヶ月ほどしてまた奥さんが帰ったと言われればホテルに行き、近況を話してセックスをした。 離れていた距離を埋めるように愛を囁く彼に溺れて、彼の指先に翻弄されればベッドの上、愛欲に溺れた。 溺れるほどの愛をくれるのに、離れると一切来なくなる連絡。 そんな"飴と鞭"が私をどんどんと彼から離れられなくさせていた。 あまりに会えない時間が多かったからか、夏前には会えなくて寂しいと思う事もなく、当たり前のように奥さんとの時間を受け入れるようになった。 これを信頼関係が出来たのだと言えば聞こえはいいのだけれど、実際のところやはり、私が何も感じなくなっていたという方が正しいんだと思う。 それを証明するように、この頃の私は会う人会う人に雰囲気が変わったと言われ続けていた。 . . .
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