東京

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ホテルの部屋に戻った私が洗面所にある大きな鏡の前でパールのピアスを外していると、彼は後ろから近づいて、服の上からブラのホックを外した。 いきなり外された事に驚いてピアスのキャッチをシンクに落とした私は、転がったキャッチを咄嗟に拾い上げると彼の方を振り向いた。 「ほんと嫌。この器用な左手」 彼は私を挟むようにシンクに手をついて「褒め言葉だろ」と私を見つめた。 「万年筆持たせとくだけじゃ勿体ないくらい」 「最近は君の体を触るのにしか使ってないよ」 「嘘つき」 「嘘なんかついてないだろ」 「私よりいつも触ってるものがあるでしょ?」 私は彼の左ポケットに入ったタバコの箱に、ズボンの上から触れた。 「ああ、確かにな。コレは離れたくても君以上に僕を離してくれないんだ」 「私と同じにしないで。取り憑かれてるくせに」 彼は少し笑って左手で髪を寄せると、私の首元へと唇をそわせていく。 女を喜ばせるのも、結婚の証をはめるのも、お金を生み出すのも、煙で遊ぶのも全てこの左手。 彼が持っているもの全てが、この左手に集中してる。 「ねぇ。今日のあなた楽しそうだった。久々にあの人たちと会えたのが嬉しかった?」 タバコの箱に触れた手を少し横にズラせば、彼の大きくなったモノが私の手に触れる。 「いや、君が褒められてるのを見てたから」 「わたし?」 「そうだよ。愛する人が周りに褒められるのは嬉しいことだろ?」 彼は私をシンクの上に持ち上げて服をたくしあげると、胸の先端に舌をそわせた。 ああ、なんだそっか。 それであんなにご機嫌だったの?  彼も結構、単純なところがあるんだなと硬くなった彼のモノをズボンの上から指でなぞった。 あなたが人に見せたいと思うほど私は綺麗なんだ。 なら、私がしてる事は間違ってない。 これで正解なんだ。 彼の自慢として側にいられるのなら、奥さんのフリだってなんだってしてやろうと思った。 例えそれが、見せかけだけの作り物だったとしても__ . . .
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