捕食する日々

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 無職生活を始めて2か月がたっていた。貯金はドンドン減っている。一応まだまだ蓄えはあるが、生活時間がめちゃくちゃになっていた。それに誰とも会わず、マンションの一室の中に閉じこもっている。  このままでは社会人として復帰することが手遅れになってしまう気がした。  さらに、ゲームをして寝てを繰り返す生活であっという間に時間が経過していることも焦りの要因だった。  このままではあっという間に貯金が底をつく。せっかく時間があるのだから、色んな事に挑戦したかったしもっと別のことに時間をかけたかった。  そんなことを考えても、もうとっくに引き返せないところまで来ている気もしている。この生活の沼にハマって腰のあたりまで浸かっている感じ。  そんな状態でも人間は何かを食べないと生きていけない。  昨日はコンビニでロースかつ弁当を食べた。おとといは、たまには魚を食べようと思い、サンマを焼いた。  日々、命を喰らっている。僕は僕の血と肉となり消費されていく命にどう向き合えばいいのかわからなくなってきていた。  僕は家畜として生まれた。食べられるという使命の元、生かされてきたのだ。でも、今は何のために生きてるのかわからないのだ。  深夜に少し外の空気を吸いたくなって散歩に出た。帰りにコンビニでもよって甘いものを買おうなんて考えながら。  気分が落ち込んだときは甘いものを食べればいい。人は食事で幸せな気分になれる。  そんな、なんの特別でもない外出。僕はそんな、適当な日常の中で命を落とした。  車に跳ねられたのだ。  一体どういう経緯でこんな状況になったのかはわからない。ただ普通に道を歩いているつもりだった。  吹き飛ばされて、道の上で横になっている自分が居た。まだ生きているけど、どこか遠くから自分を見ている気がした。  瞼を閉じるまでの間、走馬灯を見ることは無かった。そんな大層な上映会が開けるほどの人生ではなかった。  その代わり、自分が食べたすべての命が僕を見下ろしているような幻覚を見た。多くの命の上に僕は生きてきた、多くの命が僕を生かしてきた。  僕は誰を生かすこともなく死んでいくのか。  僕は誰の糧にも成れず終わってしまうのか ――あぁ、誰か。誰でもいいから。 「僕を、捕食して」
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