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セナの声に身体は熱い。
「僕は、大丈夫」
近衛兵も僕のフェロモンに当てられて荒い息を注いでいるが、セナに歯向かうこともなく床に倒れたまま抵抗しない。
セナが剣を床に投げて、金属と大理石のぶつかる音が響く。
「すぐに医務室へ」
倒れた近衛兵を抱えるようにして駆け寄った近衛兵と侍女たちが出ていった。
セナはドサリとベッドに座った。
そのセナの片膝に両手を重ねて見上げた。
「どうして入った?」
「この、甘い香りが、ここにはあって、惹きつけられて。それに、今日は、会いに来てくれなかった」
セナが爪を立てた両手を解いて引き寄せた。そのままベッドに引き上げられてセナの上に伸し掛かった。
下から見上げる瞳が熱く潤んでいる。さっきよりもさらに甘い香りが強くなる。僕の香りも強くなっているはずだ。
「僕の、ものに、僕だけのものにしたいって、思ったら……」
続きを促すように目を細めて微笑む。
「セナが好きだって思ったら、発情期が来た」
顔は熱い。羞恥と発情で耳まで熱く感じるほどだ。
片手を解くとセナが僕のうなじに手を伸ばした。
「よく守ったな」
「セナが、あの日約束してくれたから。僕もセナに守られたくて。僕をセナの運命にして」
セナが引き寄せて抱き締められる。
「ああ、俺のΩ。俺はお前のαだ」
運命の番なんて本当は架空の伝説かもしれない。
だけど、僕たちは出会った。
階段から降りてくる神々しいαは僕の手を取った。その瞬間に僕の身体は知っていた。このαが運命であることを。
あの日の約束のとおり僕を守り、僕は守られることを望んだ。
2人運命が尽きるまで。
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