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「俺のΩ。どうか俺を受け入れてほしい」
微笑まれるとドキドキして上気してしまう。αならΩの香りを敏感に察知するから僕が既にこの微笑みに弱いことは知られているだろう。ドキドキして上気すればフェロモンも香る。意識すればするほどに。
「レイ。朝食にしよう」
新国王のセナは執務が忙しい合間に僕に会いに来てくれる。
寝室を共にすることはないが、手や頬、口づけは日常茶飯事で慣れてくると許してしまう。
時間を持て余すとセナに訴えると、侍女たちと一緒に仕事をしてもいいと許可をもらった。城内の事がよく分かるからと快諾してくれた。
侍女たちはΩも数人いて、僕が国王の番候補だということは皆が知っていて、突然現れて僕を甘やかすセナに最初は驚きはしたものの、微笑ましく見過ごしてくれている。
「レイッ」
廊下の向こうから呼ぶ声が聞こえて、両手に抱えた花を落とさないように、「ここです」と返事をした。
近衛兵を連れて僕の側までやってくると、抱えた花ごと抱きしめて髪の中に顔を埋める。そのまま頭にキスをされて、「は、離れてください」と押しやるとパッと離して、「ああ、花が潰れるな」と微笑まれる。
周りに人がいてもお構いなしのセナに面食らってしまう。
「仕事より俺を優先しろと何度もいってるだろう」
セナに連れられて私室に向かう。
気に入った花を庭から採って来て、数日おきに入れ替えている。
セナの私室に花を挿しているのをソファーに座ったセナが、「仕事熱心なのはいいが、俺をおざなりにするな」と冗談めかして言う。
セナといると落ち着かないのだ。冗談を言っていたと思うとすぐに甘い雰囲気に変えてしまう。すぐに僕をソワソワさせる。それなのにスルリと避けて去っていくのだ。
大きな手が僕の頭を撫でて、「仕事よりも俺の側にいて、俺を一番に想ってくれればいいのに」と微笑む。
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