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もちろん一番はセナだ。ここへ連れてきたのはセナで、僕を落ち着かない気持ちにさせるのもセナだ。
「それで、他のαはどうだった? 侍女や近衛兵の中にαがいたんだけど、気が付かなかった?」
言われて思い返してみてもαの香りも、誘惑もされなかった。
「本当にαですか?」
「これまでもお前はαに出会っていたはずだ。気が付かなかったのは俺に出会うために運命が引き寄せていたからだ」
得意げに言われるが僕は困惑するばかりだ。
「城内にαは多い。Ωのお前が心配でたまらない」
僕のフェロモンに引き寄せられるαがいないとも限らない。
セナがレイの肩を引き寄せる。
「そんなに心配しなくても……」
まだ一度しか身体を合わせてはいないのに、その快感を知っている身体は簡単にセナを求めてしまう。顔を熱く感じるほどに身体が熱くなっているのを感じる。
「レイ。俺は執務に戻るから、落ち着いたら自室に行きなさい。今日はもう部屋から出ないで」
額にもう一度口づけをするとセナは立ち上がって、僕の手を引い手自室まで送り届けてくれた。
僕がセナに誘惑されたのは気がついたはずだ。
僕がそれに反応して発情したことも。
他のαが何人も側にいたのは気が付かなかった。
誰のフェロモンも感じなかった。セナが度々やってきて僕を構った時には僕からフェロモンが溢れていただろう。だけど、誰も襲ってくることはなかった。
運命の番に出会ったからだろうか。
セナは本当に僕の運命の番なのだろうか。
『お前は俺が守る』と約束してくれた。
ここに来て10日が過ぎた。セナは毎日僕を『俺のΩ』と呼んで優しく、甘く接してくれる。
こんな求愛を僕は知らない。
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