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悍ましく生々しい音が前方に響き渡った。
女の子が落ちたそれで間違いないだろう。
そして周りは悲鳴やらで逃げる者もいれば集まる者もいた。
そんな僕は誰よりも彼女の近くにいた。
「ご……ごめんなさい……っ」
受け止められなくて、ごめんなさい。
彼女の前から後ずさろうと思ったが足がいうことをきかない。
あまりの恐ろしさの光景に……。
「こちらの方こそ、ごめんなさい……」
「……⁉︎」
どこからの声かと疑った。
その声の主は、うつ伏せに倒れている彼女のものだった。
「それと、受け止めてくれなくて、ありがとう。
これでやっと、楽になる……」
そう言って、彼女は静かに目を瞑り声を出さなくなった。
ありがとう?何でお礼を言うんだ?
僕は君を助けようとしなかったんだぞ?
実際は彼女が空から降る前に、僕は知っていたんだ。
──君が僕の横に立つ廃ビルの屋上から飛び降りようとしていたのを。
自殺を図ろうとしていたのは、なんとなく分かっていたんだ。
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