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Abstract
「2人で抜けません?」
初めて出会ったその日から、食えない男だと思った。
眼鏡の奥に佇む瞳の温度に変化はなく、何を考えてるのか分からなかった。ただ、薄い唇で綺麗に弧を描き、私がその提案にどんな決断をくだすのかを、余裕な面持ちで観察してるようにも見えた。
しかし、私がほんの少しの迷いを見せた時に、その眼差しに獰猛な獣のような鋭さを発見してしまったので、酔った勢いで思わず吐露してしまった。
──私ってもしや、捕食対象に見られてる?
馬鹿げた質問を至極真面目にぶつけると、彼は思いのほかカラッとした笑い声を上げて私に言った。
「惜しいです。恋愛対象として見てます」
結局、その後美味しく頂かれてしまったので、彼より私の言葉の方が的を得ていたんだと思う。
ただ1つ言えることは、その夜をきっかけに始まった彼と私の関係性については、全く予測できていなかったということだ。
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