10 Training 研修

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 雪洞を作るのは、素手じゃ少し難しい。  ブルーは作りかけて途中で辞めた。無理だ。道具もないし、体力もない。ちょっとした窪みを作った時点で座り込んだ。何か雪に敷くものがないかと落ちていた杉の葉を集めてみたが、クッション分にはかなり足りない。  風が少しあったが、それを辛うじて防げる程度の場所取りはできている。が、フランキーに見つかりやすいかというと、逆効果だと思う。かといってこれ以上動くのは無茶でしかない。  徐々に寒いという感覚がなくなってきていた。息がギリギリできる程度。眠い。眠いのはまずい。  ブルーは体を縮めて小さくした。頑張ればまだ起きてられる。  でも眠い。  ビーグルのドビーは小さくて猟犬としてはちょっと怖がりなところがあったが、捜索にはいい犬だった。フランキーはドビーをむしろ警察犬にしてはどうかとダニエルに提案してみたが、ダニエルは猟犬としても最高だと鼻を高くした。  フランキーはジープで10分ほど走らせた辺りから捜索を開始した。その辺りから人家が全くなくなり、奥への道はほとんど知る人ぞ知るエリアになるからだ。ピックアップトラックのタイヤ痕を探りながらフランキーは途中、何度か止まって雪の上の轍を確認し、少しずつ移動した。  いくつかの分岐路でフランキーも道を迷いかけたが、行きつ戻りつして、通行禁止のロープがかかったところに新しいタイヤ痕を見つけたときは気がはやった。  フランキーはロープを外してジープで入り、下り坂になっている道を慎重に進んだ。ガリガリと凍りついた道がタイヤを削るような音がしていたが、とにかく進む。アヤのピックアップトラックのタイヤはチェーン付きだったのでこの氷の表面を砕いて進んだのだろう。  坂の勾配が急になる手前でフランキーは車を停めた。  アヤは先にブルーのスマートフォンを別の谷に捨ててから、こっちに向かったはずだった。誰かと協力して二手に分かれたなら話が変わるが、そんな雰囲気はなかった。となると、時間的にもこの辺りが折り返し地点だろう。でないと引き返してフランキーと店で合流できなくなる。  これだけ静かなエリアになれば声が届く。  フランキーはドビーを外に出し、それから道の両側に向かって声をかけた。 「ブルー! 大丈夫か? すぐ助けに行くからな!」  自分の声がこだまするのを聞きながら、フランキーとダニエルたちと道を進んだ。ドビーは辺りをフンフンフンフンと嗅いでいるが、何かに気づいた感じはない。  フランキーはブルーのかすかな痕跡を探し、空中に向かってブルーの名を呼びながら歩いた。
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