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「移送中の交通事故で受刑者が脱走。5人のうち3人は確保したけど、2人が不明。たぶん2人は一緒に移動してる。一人はJ・ブラウン、アフリカ系、身長185センチ、体重82キロ、強盗殺人で服役中。警官の銃を奪って逃げてる。民家で盗んだ上着を身に着けてる。靴は30センチ、支給の運動靴。筋肉質で実際、力も強い。もう一人はT・アルー、スペイン系、身長170センチ、体重65キロ、薬物売買で服役中。同じく民家で奪った服を羽織ってる。ナイフも盗んだ模様。靴は25センチ、支給品。痩せ型だけど狡猾。こっちにトレーサーがいることは知ってる可能性大」
アリスが状況説明し、ブルーは空を飛んでいるヘリとドローンを見た。
「空から追えなかったんだ?」
「向こうの森に入った可能性が高い」
ブルーは首を回して森を見た。あまり整備の行き届いていない幹線道路で、交通量もそう多くはなかったのだが、移送車の反対車線を走っていたトラックが中央を超えてきたという。そのトラックも現在ヘリで追跡されている。おそらく共犯なのだろう。
ブルーは森の木々を見た。晩秋の広葉樹の森は落ち葉が多い。風で落ちた葉が痕跡を隠す前に見つける必要がある。
「サーモセンサーは?」
「やってる。あんたはこっちのやり方に口出ししなくていいの。仕事をしなさい」
アリスが睨み、ブルーは肩をすくめた。
「トレーサーがいるって知ってるってことは対策してるかもってこと?」
「そうよ、よくわかったわね、って褒められたいの?」
「その裏を読めってこと?」
「そう」
「そいつが追ったことがないなら、対策なんて知れてる」
「ブルー、それを何て言うか知ってる?」
「ん?」
ブルーはアリスの灰色の目を見た。そう言えば、灰色狼という別名も聞いたことがある。魔女とか氷の女王とか、いろんな恐ろしい別名を持っているのがアリスだ。髪もシルバーブロンドだから、灰色狼ってのは言えてる。
「慢心って言うの。言われたことを素直に聞いて仕事をしなさい。行って」
アリスが言い、ブルーは小さく息をついてルイスたちがいる方へ歩いた。
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