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幹の傷はたまに現れた。ブルーはそのたびに困惑した。罠なのかミスなのか。
そして岩の多いエリアに差し掛かったとき、岩の一つに同じような傷を見つけて考え込んだ。
「この先に進むと人家がある。そっちに行った可能性はあるか?」
ルイスに聞かれ、ブルーは岩を見つめた。
「わかんない。アリス、聞こえる?」
ブルーは森の外で待っているアリスにイヤホンから声をかけた。UPの支給品の一つにスマートフォンとイヤホンのセットがあり、それは業務中は常時必携とされている。
「聞こえてる」
アリスが答え、ブルーは空を仰いだ。枯れ枝が重なり、空はあまりよく見えない。
「25センチの残りの刑期は?」
「アルーは残り3ヶ月」
「30センチは?」
「6年半」
「25センチは金を持ってる?」
「一部は回収されたけど、売上の大部分はまだどこかに隠してるとされてる。アルーをブラウンが金目的で引き連れてるわけ? 協力してるんじゃなく?」
「かもね。手錠のサイズは俺んときと変わってないよね」
「あんたは子どもだったから手錠は抜けたでしょ。拘束バンドじゃなかった?」
「手錠もかけられた。見た目のインパクトがさ、あるから」
「じゃぁ同じよ。規格変更はない」
「わかった。要求がないってことは、まだ立てこもってないよね」
「多分ね」
「ありがと。再開する」
「ブルー」
呼び止められ、ブルーは動きを止めた。
「相手は銃を持ってる。踏み込み過ぎないようにすること」
「わかった」
ブルーはマイクを口元からずらし、待っているルイスたちを見た。
アリスとの会話は、ルイスやミキも聞いていたから説明の必要はない。2人とも怪訝そうな表情は見せたが、どうであれやることは同じだった。ターゲットを追う。
追われていることを知っているなら、岩場を行ったほうが足跡を消せると思うのが普通だろう。岩場にも痕跡は残るから、ブルーにとっては大きな問題ではないが、きっと素人ならそう考えるはず。それでも砂地を歩いたのは、追わせるためなのかもしれない。
あるいはそれは完全な罠で、自分は間違っているのかも。
ブルーは迷いを感じながらも、痕跡をたどることに集中した。
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