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ブルーはいつものように、スタート地点に立つと、ターゲットの目線を再現して辺りをじっと見つめた。
ルイスはそれをじっと見つめた。
相変わらず理解できないが、たぶん、奴は今、トーマスになりきってる。
とはいえ、ブルーは霊能者とか超能力者ではない。能力的には普通の19歳だ。育ちは良くないし、高学歴どころか普通の学歴も持ってないが、前科はある。そういう点では普通じゃないかもしれないが、ブルーが育った地区ではそう珍しい経歴でもない。
ブルーが立ち上がって歩き出し、ルイスはその後をついて行った。
ブルーは足元を見つめて止まり、それから再び5歳の目線になっては、少し歩くというのを繰り返した。たまに戻って違う方向へと進むが、やはり再びさっきの見えない道を行く。ブルーには点線が見えているかのように、慎重に進んでいく。
10分ほどして藪に近づいたブルーはルイスを振り返った。
「見て、ここ」
そう言われてルイスが見ると、どんぐりがいくつか見えた。辺りには松の実やどんぐりが山程あるし、何の不思議もない。
そんな顔をすると、ブルーは小さく息をついて説明した。
「これはトゲカシ。この辺の木は違うし、ここは向こう側に枝が折れてる。枝の折れ口が新しいから、ここ数時間てとこ」
「いや、だけど、こっちは両親がいた方向とはまったく反対だろ。木の実拾いに飽きて両親のとこに戻ったんじゃなかったか?」
「地面を見て、あちこち回ってた7歳の子が、方角を正確に理解してると思う? 何か言いながら走って行ったから、両親のところに行ったんだろうと思ったんじゃないの」
ブルーは藪を抜けて下り坂を降りていく。ルイスも慌てて後を追った。
「見て、滑った痕がある。俺のよりは小さい。子どもの靴のサイズ」
ブルーが懐中電灯を地面に照らし、粘土質な箇所を示す。確かに誰かが滑った痕はあるが、靴のサイズまではわからないし、最近のものかどうかもわからない。
「犬はこっちに来なかった?」
「犬はまだ来てない」
「は? なんで?」
ブルーが青い目を剥いて言い、ルイスは肩をすくめた。
「おまえで充分だと思ったからだろう」
「意味わかんねぇ」
ブルーは吐き捨てるように言って、崖を滑り降りるように下った。ルイスは革靴だったことを後悔した。怪我をしないようにゆっくり追いかけたが、すぐにブルーに引き離された。
「ブルー、待ってくれ」
ルイスは声をかけ、ブルーに無視された。
「その辺、川だから気をつけて」
しばらくしてブルーが言ったが、ルイスは片足を水に突っ込んだ後だった。
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