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ブルーは既に修理されてしまった屋根を見せてもらい、監視カメラの映像も見せてもらった。画質の悪いそれは、スニーカーとジャンパーの反射材を光らせるだけで、他のものはほとんど写してなかった。
ブルーは店の前のベンチでライスボールを齧りながら、セオリー通り犯人が犯行を自慢してないかSNSを調べる。ミントガムとヌガー入りのチョコバー、コミック雑誌とファッション雑誌が一冊ずつ。入ったのは2人。シルエットから見て10代半ばに思えたが確実ではない。体の小さい高校生だっている。何なら体の小さい大人だっている。ガムとチョコバーと雑誌が好きな。
SNSには上がっていなかった。まぁ、必ずしも調子に乗った若い窃盗犯が、初めて窃盗に成功したからって自慢するとも限らない。
ブルーはフランキーが入れたアプリを確認した。追跡ソフトは表面にわかるところには入っていなかった。ブルーはサイバー犯罪に詳しくないので確認方法はわからないが、フランキーが入れたって言うなら入れたんだろう。位置情報を切ってしまえば解決する気もするが、そうするとフランキーに怒られるだけなので止めておく。
駐車場の監視カメラの映像では、2人はフラフラとスクーターを2人乗りしてやってきていた。ということは、雪の深い山側から来たわけじゃない。下から来た。つまり被疑者は20人から2,000人ぐらいに増える。
ブルーはスマートフォンで監視カメラの映像を見直した。念の為にもらった過去の映像も見直す。
スクーターのタイヤの痕跡なんて、もうとっくに消えているし、靴跡だって画像にしか残っていない。ブルーは息をついて、雪が降っている空を見た。空の向こうは白く煙っていて、木々の奥には白い山がうっすら見える。研修から逃げようと思えば逃げられる。スマートフォンを追跡されてるなら、置いていけばいい。
問題はフランキーが追跡のプロだってことだ。
国の反対側に逃げたって、たぶん3日で捕まってアリスに引き渡され、逃亡犯として、即、刑務所送りだ。
ブルーは肩を落とし、うんざりして立ち上がった。
店の周囲を歩きながら、ブルーは壁と屋根を見上げた。そして同時に地面の様子も見る。
ブルーはフランキーに電話をかけた。
「フランキー、現場だったら監督捜査官と相談しながら進めるんだけど、それはナシ?」
「そろそろ独り立ちしたいだろ?」
フランキーは楽しそうに言った。意地悪だとブルーは思う。俺の周りには、まともな大人がいない。クソッタレ。
「新人研修中の非正規の未成年なのに? あのさ、一つだけ確認したいことがあるんだけど」
「ノーヒントだ」
「ちょっと待って。待ってってば、クソ、ボケジジイ」
ブルーは途中で切れた電話に叫んだ。スマートフォンを雪の中に放り投げる。
クソ。聞きやがれ。
ブルーは雪を思いっきり蹴飛ばしまくった後、仕方がないからスマートフォンを探した。
スマートフォンは雪に埋もれていたものの、短時間なので何とか壊れてなさそうだった。
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