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平屋のアヤズ・ストアの屋根が歪み、それを見た犯人2人はほろ酔い気分で中に忍び込んだ。
あのグロサリーストアにはお菓子も雑誌もある。何でも好きに飲み食いできるぜ。一晩中、遊べる。どうせ大したセキュリティはない。
でも2人はミントガムとチョコレートバー、それから雑誌2冊で逃げ出した。
滞在時間は5分ほど。
侵入成功の喜びに浸る間もなく、裏口から逃げ出している。
計画した窃盗なら話は別だ。滞在時間は短ければ短いほどいい。
てことは、だ。
ブルーは首を振った。推理はあんまりしなくていいとアリスやフランキーにも言われている。事実だけを見ろと。
じゃぁ足跡に注目。
ブルーは駐車場の監視カメラの画像を拡大して見る。
侵入犯2人はスキップするように店に近づいてる。
5分後、彼らが裏口から出ていく姿は映ってないけど、スクーターを取りに来た姿は小さく映っていた。急いで逃げている。周りを気にする雰囲気もなく、ひたすら早く遠ざかりたいという雰囲気で。足跡もそう告げている。歩幅が広く、乱れている。
ちゃんと分析できたら、靴のサイズもわかるんだけど。
ブルーはスクーターのナンバーも見ようとしたが、小さすぎて無理だった。
UPなら陸運局のデータベースとかと連携して、この町のスクーターの持ち主一覧が出せて、指紋だって調べて一発だろうに。
いや、そういう夢は見ないでおく。
研修だからな。
ブルーは店の裏口で立ち止まり、緑色の裏口ドアを見つめた。
ここから逃げていった。
店に入ったのは、あっちの屋根の端で、入った後、2人はすぐそばにある雑誌コーナーで本を取った。ガムはカウンターの上。それまでに魅力的なものは山ほどあったのに、チョコバーだけ取ってカウンターに直行。金を取るつもりならわかる。でも金には手をつけず、カウンターの奥にある倉庫の裏口から出ていっている。
ちょっと待てよ。これなら滞在時間は3分でいい。
店内にある監視カメラはカウンターとは反対側のドリンクケースの冷蔵庫と雑誌コーナーの角しか写してない。2人が侵入してきたのはそこだが、それ以来そこに近づいてない。
ガチャリと裏口が開き、ブルーはちょっと驚いた。
顔を出したアヤも驚いた顔をした。ゴミの入った空き箱を外に出しに来たようだった。
「あら、まだいたの」
ブルーはうなずいて、裏口を指差す。
「そこから店に入ってみてもいいですか?」
そう聞くと、アヤは眉を上げた。
「いいけど、どうして?」
ブルーはそう聞き返されて、理由を考えた。
「なんとなく?」
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