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「夫婦間でルールを決めないか? このままではお互いに不満を感じる事になるだろうから」
何の脈絡もなく夫がそう言い出したのは、結婚式からちょうど一年経った日の事だった。彼が手にしている数枚の白い用紙が気になりつつも、夫に言われるまま椅子に腰掛ける。
「ルール? 不満って、どういう事ですか?」
夫である岳紘はどうかわからないが、私にとって彼は初恋の人でありずっと思っていた相手。そんな人と結婚出来た事に不満などなかった。
……そう、たった一つ。あの夜の事を除いては。
お互いに気まずくなったあの夜、だけど次の日からは何事もなかったように新婚生活を始めた私たち。
結婚しても医療事務という仕事を続ける私を理解してくれ、家事にも協力的な夫の岳紘さん。休日には二人で買い物にも出かけ仲の良い夫婦に見えるはず。今すぐに夫婦生活は出来なくても、そのうちきっと……そう思っていたのに。
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