Rule 1

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 確かに私たちは恋人同士の期間もあり、きちんと恋愛をしての結婚ではあった。だけど私たち二人の交際、結婚を強く望んでいたのは互いの両親でもあったから……  私や夫の岳紘(たけひろ)の親はそれなりに有名な会社の経営者である。昔からの友人だと言うその父達は、子供同士を結婚させて二つの会社をより大きな物に成長させようと約束していたらしい。  私たちが結婚したいと話した時の、父達の嬉しそうな顔は今でもしっかり覚えている。そんな二人に簡単に離婚したいなど、岳紘さんでも言い出しにくいのだろう。  運が悪ければ怒り狂った私の父に、どんな仕打ちを受けるかもわからない。 「私から、離婚をしたいと父に言えば問題ないですよね? 別にそれでいいですよ、なんなら慰謝料も無くていいです」  こんな時、自分はもっと感情的になるんだと思ってた。ショックを受けて泣いて、憤りを相手にぶつけて大騒ぎするのだと。それなのに現実は違った、ショックのあまり頭はまともに働かなくて感情的にもなれないまま……  ただ、もう一緒にいることは出来ない。そう感じていた。 「離婚はしない、(しずく)がなんと言おうと君は俺の妻だ」 「心も身体も何一つ私のものでないのは、岳紘さんの方じゃないですか? それなのに私には妻でいろなんて……」  こんな提案をされなければ、何も知らないまましばらくはこの人の妻でいれたかもしれない。けれどこの結婚になんの未来も望めないと知らされれば、誰だって……
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