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少なくとも私は岳紘さんの事を愛していた。結婚するよりもずっと前、小さな子供の頃から彼に憧れそれはいつしか特別な想いへと変化していったのだから。
だからこそ彼が他の相手と深い関係になるのを傍で黙ってみていることなどできるわけがない。
「我儘を言っていることは分かってる、だけど俺には雫の存在が必要なんだ」
「……よく、そんな酷いことが言えますね。私にだって心くらいあるのに、岳紘さんから離れることも許してくれないの?」
何を言われようと私の気持ちは離婚に向かっている、夫婦としての夜がなかったためもちろん子供もいない。それなら尚更無理をして、こんなルールまで作り二人で暮らす意味などないはず。
……そう、思っていたのに。
「雫のお父さんがこんなに早く離婚して、君が家に戻ることを許可するだろうか? もし俺が引き止めているのにそれも聞かずに出ていったと言えば、すぐにこの家に戻るように説得されるだけだ」
「何を言ってるんですか? そんなの離婚したい理由を言えば……」
そう、岳紘さんが私以外の女性と特別な関係になりたがっている。それを話せば父だって私が離婚を望んでいるのを理解してくれるはず。だけど……
「俺は浮気をしていると言った覚えも認めた訳でもない。雫がお父さんにそう話しても俺ははっきりと否定するよ、離婚するつもりはないってね」
「そんな!?」
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