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初穂は引っ込み思案な女の子だった。
それ故に異性に対して免疫がない。
助けてくれたので、悪い人では無いと思う。
でも、もしかしたら、変な人かもしれない。
そう思った初穂は、寝付きが悪くなった。
それから三日後、自宅で勉強をしているとスマホのSMSでメッセージが入った。バスで会った少年だ。
数度のメッセージのやり取りの後、少年から、喫茶店にて会いたいというものが送られて来た。
初穂は迷いつつも、承諾する返事を送る。
そして、今日が約束の当日なのだ。
初穂はメッセージをやり取りしていたのに、少年の名前を知らないことに気づいた。
初穂が名乗ると、少年も名乗り返す。
「僕は、白戸空。大学生です」
初穂は内心で驚いた。まさか年上とは思わなかったのだ。
そこで、ふと会話が切れてしまった。
お互いに何かを言わなければと思いながらも、言葉が出て来ないのだ。
そんな中、先に口を開いたのは、意外にも初穂だった。
初穂は、意を決したように言う。
「先日は、ありがとうございました」
ぺこり頭を下げる初穂。
空は、それに答えるように、慌てて頭を下げる。
頭を上げた初穂は、続けて言った。
「どうして、助けて下さったんですか?」
初穂の問に、空は初穂の目を直視して答える。
「それは、三国さんが徳がある人だから。世界に必要な、生きるべき人です」
初穂は、その空の言葉に胸を打たれる。
今まで、生きていて良かったと思えることはあっただろうか。初穂は決して要領の良い子ではなかった。 いつも自分は誰よりも遅く、何かにつけて先を行くクラスメイトや友達に対し、待って貰っているのが初穂であり、迷惑をかけないようにと努力してきた。
でも、それが報われたと感じたことはない。
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