万全のアフターサービス

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「この店に行けば、きっといいことがありますよ」  しょぼい身なりのくせに、やけに目を輝かせたおっさんが、俺に一枚のチラシをさし出した。ペラペラの紙の上から、ものすごい美人がほほ笑みかけてくる。 「いや、金ないから。こんなきれいなねえちゃんのいる店にはいけないよ」 「よく読んでください。飲み屋じゃないんですって」  見れば見るほど、おっさんの服はボロい。だが男前だった。よく、貧乏神みたいと言わた俺とは大違いだ。 「店に行ってみてくださいよ。本当にいいことありますから。約束しますよ」  やたらと張りのある声を残しておっさんは姿を消した。  なんだ、あいつ。なんであんなにやる気満々なんだろ。チラシ配りが楽しくってしょうがないみたいだな。変なやつ。俺にいいことなんてあるわけないのに、はあ……。  今日で何度目かのため息をまじえてチラシをながめていると、信じられない文字をみつけた。 『これはアンドロイドです』  人間だと思っていた美人が、実は作りものだと紹介されている。 「俺がぼおーっとしている間に時代は進んだんだねえ。俺の出る幕なんてこれっぽっちもありゃしない。やっぱり、死んじまったほうがいいのかな。だけど、踏ん切りがつかないなあ。さてと、どうしたもんか」  あきらめのつぶやきを終えた瞬間、ひらめきの神さまが俺の頭をぶんなぐった。  こいつと死ねばいいんだよ。
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