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音量がでかいと思った。
カラオケ店で働く川島智也はガラスドアの向こうにいる女を見て不快感を増した。
自分が受付をしたので、部屋の中にどんな人が居るのかは知っている。
二人組の女性客だ。
二十代前半。わりとよく来る客だったので顔を覚えている。
智也はそのうちのひとりが歌っているのを見て、非常に不愉快に思ったのだ。
歌が下手とか、大きすぎる音が直接的な原因ではない。
不細工さが一番の原因だった。
ブスだったのだ。
まず、太っていて、顔もひどい。
夏なので短いスカートを履いているが、肌を露出することでより不快感が増してしまうほど醜い足をしていた。
大根足というよりは、食べ物を詰めすぎた胴体に二つの米俵を足したようだった。
欲張りの象徴のようにも思えた。
「ブタは動物園でエサでも食ってろ」
そう、心の中で吐き捨てた。
川島智也はどちらかというとまじめな性格だった。
誰とでも分け隔てなく接してきたし、みかけで人を判断することなんていままでなかった。
それなのになぜ、今の自分がこんなにもこの客に対して不快感を持つのか不思議に思った。
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