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どんなに綺麗事をいっても、
結局のところ自分の本心は誰かを見下し、否定しているのではないか、
そんな風に、自分のことを悪く思った。
ただ、間違いなく、その不細工な女のことが嫌いだということは確かだった。
初めてその人と会ったのは今から数ヵ月前のことだった。
その日は、カップルで来ていた。
太った女と、なんの特徴もない男。
カラオケの部屋の予約をしていて、空いたときに智也が案内をしたのだ。
そのとき、女は泣いていた。
言葉にすれば、女が泣いていて、男がそれを慰めているようだった。
珍しい光景ではないが、女があまりにも不細工だったので、智也の記憶にしっかりと残った。
もしかしたらこんなことかもしれないと想像した。
女「私なんて生まれてこなければ良かった」
男「そんなことないよ。君は何にも悪くない」
女「私が、というよりは、見た目、なのかな」
男「どうしたの?」
女「普通に働いているだけなのに、明らかに周りの態度が違うわけ」
男「なにがあった?」
女「新人の子がきたの。私と同い年」
男「うん」
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