記憶怪盗

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夜空のような精神世界(インナースペース)。 星のように輝くは人々の精神(こころ)。 優雅に彼は宙を舞う。 今夜の獲物(ターゲット)の精神につながるドアの前に立ち、ステッキを握り直し構える。 すると、ステッキは片手剣(レイピア)に変形した。 「お邪魔いたします」 一礼し、レイピアの切っ先でいとも簡単に錠前を解除する。 素早く内側に忍びこみ、彼は精神の中めがけて跳んだ。 通常、人の精神は他者の侵入を拒むため、十二階層にわたり警報装置が存在し、ひとたび警報が鳴れば迎撃システムが作動する。 警報装置を解除、あるいはくぐり抜けながら、第一階層から第十二階層まで突破した彼は精神の最深部に降り立つ。 映画のフイルムのように宙に浮かび流れる記憶。 修羅のような顔をした実の両親。 毎日のように浴びせられる罵声と暴力。 傷だらけの幼い女の子。 刻み込まれた辛い記憶のフイルムだけをレイピアで斬り落とし、透明なカプセルに閉じ込める。 そして養父母に愛された幸せな記憶とすり替え、傷ひとつなくフイルムを繋げる。 依頼完了。 仕事道具をレイピアからステッキに戻した彼は宙へと飛び上がり、一気に精神に繋がるドアまで戻る。 そして静かに外へ出てドアを閉めた。
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