北条 将斗

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 好みの音楽は若干違えど、意気投合した涼夜(すずや)将斗(まさと)が約束の週末練習スジオ入りし、軽く音合わせすると、驚くほどフィーリングが合うことが判り、涼夜がバンドを脱退したことを打ち明けると、暫定的にバンドを組んでみないか? と将斗からの嬉しい提案が有り、断わる理由も無い涼夜が、ではメンバーを探そうと言うこととなった。 「やっぱ、『プレイヤー』にメンバー募集記事を出して見る?」 将斗の提案で、音楽雑誌の読者コーナーに打てる告知記事の投書を検討したが、身近な処からも目星を付けることとなり、教室で額を寄せ合った。 「先ずはヴォーカルだよな──」 『ABANIKO(アバニコ)』で難儀したヴォーカルパート選びを思い、涼夜と将斗は思い付く限りと理想を語り合い、ヴォーカリストの条件をお互いに並べ立てて見た処、『彼しかいないだろう』と互いの口から出た名前が『イ・シファン』。韓国から留学して来た超が付くイケメンのクラスメイトだ。 「背は高いし、顔は小さいしさ、小さいだけじゃ無くてあの美貌だろ? こないだ鼻唄歌ってるの聴いたんだけど、スッゲー美声だった」  容姿を絶賛した涼夜が声を潜め、傍を通り掛かったイ・シファンへ目を向けた。  涼夜と将斗の後ろを回ってシファンが廊下へ出ると、まるで待ち伏せでもしていたのか、数人固まっていた他クラスの女子が、一様に騒めき立ち、中には顕らさまに頬を染め、小さく歓声を上げる女子までいた。  そんな様子へ目を当てていた二人は、互いに目を見合わせ頷いた。 (ヴォーカルは、彼しかいないだろう──)  心の中で、そう言葉を交わしながら。
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