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集合
赤、青、黄、緑、桃・・・。
色取り取りの花が勝色の夜空に咲き誇り、光が地上を明るく照らし出した。
その花、一瞬だが永遠に咲き続けるその花を、隣にいる裕貴との無言の空間に心地良さを感じながら、ただ静かに見つめていた。
神社の入り口への階段を登ると、そこは私の知らない世界のようだった。そう感じるのは、夜なのに昼間のように明るく、屋台や着物の様々な色、弾んでいる若者の声からだと思う。
私は今年この地域に引っ越して来た。今は大学三年生で、二年生まではここから近い祖母の家に住まわせてもらっていたが、やっと自分に一人暮らしをする余裕が出来たので、三年生から一人暮らしを始めた。
夏祭りに来ようと思ったのは、チラシを見てからだった。人がいない、だがどこか暖かい雰囲気を纏っている、ここに来た時から気に入っていた神社で夏祭りを行うと聞いて、行ってみたいと思った。
夏祭りに来ている、ここにいる全員が輝いていた。
人混みの中を徘徊していると「あ、紗織〜!」とどこかから私を呼ぶ声が聞こえ、私が辺りを見回すと、綾音が手を振っているのが見えた。私は綾音に近づいていった。
綾音が着ていた着物は、上から赤、紫、青色のグラデーションのようになっており、所々に黒線で蝶の柄が入っていた。しっかり者で大人な綾音にはぴったりの着物だった。
「美花達は?」
「まだ見てないけど」
そう言っていると、裕貴と紘樹が見えた。
二人が私と綾音を見つけると、人混みを押し分けながら聞いた。
「あ、俺達が最後?」
「美花がまだ…」
美花は少し遅れてきた。
裕貴は黒の無地の着物、紘樹は青の、袖口と襟口に白い線の入った着物、美花は黄色にピンクの水玉模様の入った着物をそれぞれ着ていた。
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