《2》

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「今日、私は平凡界に移住し、きみは負界に落ちる。さっきの私と同じように、高い空から落ちて、今ここにいる同じ場所に着地する。見た目は何も変わらないよ。きみ自身も何も変わらない。でも、負界というものをすぐに知るだろう。きみはやがて何を頑張ろうという気にもならず、精神まで負け組になっていく。学生だからと言って税金は免れない。今日までの私の負債も受け継ぐことになり、たった一ヶ月でそれはさらに大きく膨らむ」  ぞっとした。借金なんて、友達から千円借りたとかのレベルでしか経験がない。彼女の話しぶりから察するに、何百万単位、下手をしたらそれ以上、さらにそれ以上の額である場合がある。 「そんなの、嫌です! 私はこの世界がいいです!」  と強く言ったけど、目の前のみゆきは小さく微笑んで否定した。 「こうして肌に触れてしまうとね、もう逃れられないんだよ。同じ世界に同じ人間が存在してはならない。三つの世界に分かれて住まないといけないルールだ。でも、安心していい。いつか……いつになるか分からないけど、きみは勝界に行けるはずだ。私はそこが幸せだとは思わないけど、負界に比べたらよっぽどましだ。勝界で人生を終えられたらラッキーだね。もしかしたらまた平凡界に戻ってこられるかも知れない。それはもっとラッキーだよね。でも今、きみはもう、負界に行くことが確定した。未来、勝界に行くことも決まっている。でも、勝界へ上がるという言葉は使わない。勝界へも落ちると言うんだ。その言葉の意味を知ったとき、きみは涙するかも知れないね」
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