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泥臭い魚は皮を剝いでみよう
日が完全に沈む前に、アデルと炎路は水源こと、川にたどり着いた。川を境に、こちら側は平原、向こう側は生い茂った森になっている。
バッタ食をした場所からこの川まではおよそ10㌔くらいあった。とても日没までにたどり着ける距離ではなかったが、アデルの魔法のおかげだった。
アデルは、バッタで魔力をある程度取り戻すと、いくつかの魔法を見せてくれた。
ひとつは空間認知。エコーロケーションといえばわかりやすいのだろうか。炎路から見ればアデルは歌を歌っているように見えていたが、声で空気中の魔力素に振動を当ててその魔力素の位置関係と濃度でどんな場所か正確に認識するとかうんたらかんたら……らしい。
もう一つは記憶掌握。これは対象の記憶を盗み見ることができる魔法。今は魔力が足りないためできないらしいが、記憶の改ざんなんかもできてしまう恐ろしい魔法だ。で、アデルは炎路の記憶を覗き込んだ。互いの世界を話すより、観たほうが早いと。そしてアデルは後悔した。炎路のあまりにも悲惨な人生に同情した。アデルは「なんか、ほんとごめんなのじゃ。」と言って、優しく炎路のあたまをなでた。そんなにひどいのかと炎路が尋ねると、「正直、奴隷よりひどい」らしい。
そして最後が飛行魔法である。黒い蝙蝠みたいな翼を背中から生やして、炎路を担いでこの川辺まで運んだのだ。航行可能時間は魔力に比例するそうだが、10㌔の移動で魔力がほぼ空になってしまいしばらくは飛べないようだ。
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