出会いの平原

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 「ふぅー-。はしゃいだはしゃいだわい。しかし、この人間の体というのは細かな動きはできるが、ずいぶんと脆そうじゃのう。肌もやわらかいし、喰う分には食感がよかったが、いざ我が身になると、なんと心細きことよ。」  軽く息を切らすくらいまではしゃいだ少女は、すとんと社畜の隣に腰を下ろす。社畜の浮かない顔を覗き込みながら、少女は言った。  「ところで、おぬしは何者じゃ?」  「俺は……、何なんだろうな。名前は黒木炎路(くろきえんじ)。日本の平社員だよ。」  「ほぅ?黒き猿人とな?おぬし人ではなくサルだったのか。」  「なぜそうなる。黒い木の炎の路で、くろきえんじだ。ん?そもそも字とか言語はどうなってるんだ?」  そもそもここはどこかもわからない。日本?いや、流行りの(かは知らんが)異世界転生というやつか?炎路には死んだ瞬間の記憶はある。あの痛みが夢だったとは考えにくい。いや、こっちが夢か?  炎路はぶつぶつ考えながらも、指で地面に名前を書く。漢字とひらがな、それにカタカナ、ローマ字と書いてみた。  「ふむ、どれも読めんのじゃ。おぬしの言語が亜種なのか、それともわしが異端なのか、判別の仕様がないのじゃ。そうじゃのう…ぬしはこの字が読めるのかえ?」  少女は同じように指で文字を書いた。名前…なのだろう。アルファベットの筆記体とアラビア文字を足したような形をしていて、まったく読めない。  「何を書いているのかさっぱりわからん。」  「これはわしの名前で、『アデル』と書いておる。やはり読めぬか。」 今度はアデルが頭をガリガリかきながら、あーでもないこーでもないと唸っている。それをみながら炎路はふと思った。  「はらが減ったな。」  
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