初めての食事は土の味

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初めての食事は土の味

 アデルと炎路は草原が続く丘を下ろうとしている。何か食べ物を探すためだ。二人とも所持品はなく、炎路はよれよれのYシャツにスーツのズボン。アデルに至っては白いワンピース一枚だけである。夜になれば、冷え込む可能性もある。何か食って、エネルギーを摂らないと。お互いに気になることだらけだが、それは追々考えればいいことで、今はとにかく食べ物だ。  「のぅ、エンジよ。」  「ふぁんふぁ?(なんだ?)」  「なんでも食わねばならぬ時というものは、いつだって起こりうる。」  「ほーふぁふぁ(そうだな)」  「じゃからと言って、いきなりソレに手を付けるのは、その、どうなんじゃ?」  「…んぐ。あんま旨くはないが、貴重なタンパク源だぞ。」  「しかし、おぬしそれは…バッタじゃろ?」    炎路が先ほどからもぐもぐしていたのは、その辺にいたバッタだった。二人で歩いている先々で跳ねたバッタをひょいひょいとつかみ、キレイに翅と頭を毟って食べている。  「これまで数々の人間の愚行を見てきたが…さすがに常軌を逸しておるな。お主の世界では虫をおやつ感覚で食っておったのか?」  「いや、さすがにそんなことしてるやつはいなかったな。…けど、最近は昆虫食っつって虫を食う文化もじわじわ出始めてはいたぞ。」  二人は一応、水源を目指している。水があれば、そこに生き物も寄ってくる。小型の動物や魚が食えれば僥倖。なくても飲み水は確保できる。その算段での移動だ。そう、「動物」が食えれば良いという判断で、だ。少なくともアデルはその解釈だった。
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