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気付いたら、ソファーで寝ていた。
「寝ちゃったんだ」
ベッドで寝るより、よく眠れた気がする。
自分の身なりを整えていた時だった。
孝介の携帯のアラームが鳴っている。
寝室を見に行くと、彼が上半身を起こし、目を擦っていた。
「おはよう。朝食はどうしますか?」
朝食って言っても、美和さんが作ってくれたものは何もないけれど。
「……。朝食は要らない。俺、昨日……」
昨日のことを思い出したみたいだった。
「おい、加賀宮さんは何か言ってたか?お前はなんで起こさないんだよ!」
朝から怒鳴られ、その声にビクっと反応してしまう。
「加賀宮さんは、あの後すぐ帰りました。特に何も言ってませんでしたけど。何度か起こしたけど、あなたが起きなくて……」
私の言葉を聞き、彼はバッと布団を跳ね除けた。
ヤバい、また殴られる。
身体が萎縮してしまったが――。
孝介は携帯を持ち、誰かに電話をかけている。
たぶん相手は……。
「あっ。おはよう。父さんに聞いてほしいことがあるんだ。昨日、加賀宮さんと仲良くなってさ、実は美月を……」
昨日の出来事を父に報告していた。
仲良くなったって、変なところでプラス思考なんだから。
お義父さんは、何て言うんだろう。
私はリビングに戻ったが、寝室から聞こえてくる孝介の声はとても明るく、笑っている。
「うん!これで会社もまた大きくなる……!俺、頑張るからさ?とりあえず、父さんに報告。今日、加賀宮さんと会うんでしょ?俺のこともよろしく伝えておいて」
声が大きくてほとんど聞こえていた。お義父さんの反応も良いみたいだけど……。
電話が終わった後、彼は私には何も言わず、シャワーを浴びるため浴室へと向かった。
あっ。今日、加賀宮さんに呼び出されていること、伝えなきゃ。もしかしたら孝介より帰るのが遅くなるかもしれないし。加賀宮さんの自宅に呼び出しとは言えないけど、カフェメニューのことで……と伝えれば良いよね。
孝介が出勤の準備を終え、カバンを持った。
「あのっ」
私から話しかけようとしたが
「おい。絶対に失敗するんじゃないぞ。たまたま加賀宮さんに気に入られたからって、あんな粗末な料理、来客に出すなよ。恥ずかしい。彩りも悪かったし。まぁ、今回のことは父さんも喜んでくれたし、プラスに動いたけど。今度からあんな出しゃばったマネするなよ。それと、加賀宮さんの会社に迷惑だけはかけるな?俺の評判まで落ちる。今日は帰らない。父さんと今後のことについて話し合うから、実家に泊まる」
長い嫌みと脅しを交えた言葉を私に伝え、出て行こうとした。
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