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迅くんを見送った後、一人ホテルへ入る。
「広い……」
一人なのに、こんなに広い部屋に泊まっていいのかな。
ふかふかのベッド。アメニティもしっかりしているし……。冷蔵庫に飲み物も入ってる。
「必要なものを買って?」と現金まで預かってしまった。
できるだけ使わないつもりだけど……。
携帯を見ると、孝介からメッセージが届いていた。
<お前、どこにいるの?>
<どこかで保護でもされて、恥をかかせるなよ>
<帰ってきたら、覚えておけ>
<父さんと母さんにはもう相談したから>
<自分が迷惑かけてるっていう自覚ある?>
「見たくない。でもこれも一応、モラハラとかの証拠になるよね」
スクリーンショットに保存して、メッセージもそのままにしておいた。返信はしない。
迅くんは今でも仕事頑張ってるのに。
仕事も忙しいのに、私のことまで……。
感謝……しないと。
急な展開で頭が働かず、その日はシャワーを浴びて寝ることにした。
次の日、ホテルに迎えに来てくれた亜蘭さんと荷物を取りに行くため、自宅マンションへ向かった。
「亜蘭さんも本当にありがとうございます。巻き込んでしまって、すみません」
彼も通常業務に加えて、私の面倒も見なきゃいけないから大変な役割だよね。
「いえ。俺が加賀宮さんについて行くって決めた時点で、加賀宮さんのやりたいことは俺のやりたいことでもあるので。それに、美月さんと再会した後の加賀宮さん、とても活き活きしてて。眉間にシワ寄せてる社長より、俺も仕事がやりやすくて助かります」
仕事の時は物腰柔らかって感じだけど、厳しいところは厳しいんだ。
鍵を開け、自宅へ入る。
リビングに行くと――。
「うわっ。なにこれ……」
「一日でこんなに……。ですよね?」
目の前の光景に亜蘭さんと二人で絶句する。
イスは倒れているし、机は横になっているし、ゴミは散乱している。
イライラして、物に当たった後みたい。
「飯田美和にはフラれて、家政婦としての契約も解消するみたいです」
「……。そうなんですね」
じゃあ、他の家政婦さんを雇うまで、孝介一人で家事をするんだ。それか実家に帰るのかな。
「寝室とか大丈夫ですか?美月さんの物とかも確認した方が良いですね」
冷静に考えてみると、そうだ。
リビングがこんな状態だったら、寝室とかどうなっているんだろう。
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