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「美和、切り替えが早かった。九条孝介には好きな人ができたって、すでに伝えたらしい。だからあんなに取り乱してたんだよ。俺も予想外だった。孝介と家政婦の関係について調べたら、三年以上は関係を持ってる。お前と結婚をする前から。それがこんなにも簡単に崩れるとは思わなくて。そのおかげで、予定よりも早く制裁を加えられるけど。美月も危険な目に遭うことになって、ごめん」
簡単にまとめると……。
「うーんと。迅くんは美和さんにトラップを仕掛けて、惚れさせた。それで美和さんは孝介のことが必要なくなって、孝介のことを振った。美和さんを失ったショックで孝介はあんなにも取り乱していたってこと?」
「そういうこと」
三年以上の関係にすぐ終止符を打てるって……。
やっぱり美和も不倫って関係に悩んでたのかな。
正式に報われない、誰にも言えない祝福されることがない関係に。
「簡単に言うと、美和さんは迅くんのことが好きってこと?」
「あぁ。そういうこと」
そんな自信を持って言えるんだ。
だからさっきカメラで見た美和さんの態度が冷たかったの?
孝介のことはもう好きではない、迅くんに好意を抱いているから。
「ま、今回の件が終わって、利用価値がなくなったら捨てる。俺が好きなのは美月だけだし」
価値がなくなったら捨てる?
正直、美和さんのしたことは許せない。
孝介が一番悪いんだろうけど。彼女も陰で私のことを嘲笑って、バカにして。この間は料理にまで細工をされた。
もしあんなことがなかったら、私は孝介に殴られていなかったと思うし。
だけど、迅くんのしたことは結局は私のためだからであって……。
私も彼女に酷いことをしてしまった。
どうしよう、何が正しくて何が悪いのかよくわからなくなってきた。
「考えすぎんなよ」
私、表情に出てたかな。
「孝介がお前にやったことは、許されない行為。不倫もDVも。そして既婚者と知りながら、ずっと関係を続けていたあの女も罪に問われるのが当たり前。結婚してからずっと騙されてたんだぞ。失った時間は戻って来ないんだから」
孝介と過ごしていた無駄な時間も、ただ人形のように何もすることなく生きていた時間も戻ってこない。
「うん。わかってる」
私は自分の幸せのために生きるって決めたんだ。
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