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「ごめんっ!」
「いや……」
やっぱり、慣れない靴で来るんじゃなかったかな。
せっかくのデートだし、自分なりのオシャレのつもりで普段より高いヒールのパンプスを購入し、履いて来た。
「美月、俺に摑まっていいよ?」
「えっ?」
「どうせ慣れない靴、履いて来たんだろ?俺、その靴見たことないし」
「ええっ?」
どうしてそんなことまでわかっちゃうんだろう。
迅くんのその観察力、すごい。
「嫌なの?本当は手、繋ぎたいけど。腕を組んだ方が歩きやすいだろ?」
手を繋ぐ……。
迅くんと手を繋いで歩くなんて恥ずかしい。
いや、本当はそれ以上のことをすでに彼としているのに。
「……。うん。ありがとう」
迅くんの腕を恐る恐る掴んだ。
「もっとしっかり掴めよ」
彼にそう言われ、グッと腕に力を込めた。
深いところまでしっかり考えていなかったけど、結構迅くんの腕って男性っぽいって言うか。ガッチリしている。仕事が忙しいから、運動とかしてなさそうなのに。そう言えばこの間、孝介から逃げて家から飛び出した時も、お姫様抱っこしてくれたし、実は力持ちなのかな?
そんなことを考えていると――。
「美月、次行こうか?」
彼に言われるがままついて行くと、アパレルショップが並ぶフロアーへ。
洋服でも欲しいのかな。
なんて、考えていた時だった。
「離婚のお祝いに美月に洋服を買いたい。好きなの何着でも選んで?」
「離婚のお祝いって……」
彼にはたくさんお世話になっているし、私のせいでお金もかかってる。
そんなことできるわけない。
「孝介にほとんどの洋服、ダメにされたんだろ?知ってるから」
また気を遣わせてしまっている。
「洋服は、自分で買えるから――?」
「美月が選んでくれないんだったら、俺が勝手に選ぶ。ちゃんと試着はしてもらうから」
それじゃ、私の選択肢は<買ってもらう>しかないじゃない!?
返答に困っていると
「行こう」
彼は強引に私の腕を引っ張り、とあるショップへ入って行こうとした。
「ちょっと!待って!」
抵抗虚しく、私はその五分後にはフィッティングルームの中にいた。
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