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イタリアンレストランで食事を済ませた後
「どこか行きたいところある?」
車の中で迅くんに訊ねられた。
プラネタリウムにも行ったし、ショッピングも楽しかった。
洋服を選んでもらうことなんて初めてだったし。
「迅くんとならどこでもいい」
任せてしまう発言になっちゃったかな。
「本当?」
「うん」
「じゃあ、美月。今日、うち泊って?」
うちってあのアパート?
「うん。いいよ」
「俺、やりたいことあるんだ」
なんだろう、迅くんのやりたいことって。
荷物を取りに私の泊っているホテルへ寄ってもらった。
車に戻った私に彼が一言
「ね、お願いがあるんだけど……」
「迅くんからのお願い?」
嫌な予感半分に聞いてみる。
「夕飯、美月の作った飯が食べたい!」
夕ご飯!?なんだ、そんなことか。
「いいよ。スーパーとか寄ってくれる?迅くん何食べたいの?」
「マジ!?嬉しい」
子どもみたいに笑う彼に思わずホッとしてしまう私がいた。
スーパーへ寄ってもらい、迅くんからの<和食>という宿題に少しだけ悩みながらも彼のアパートへ帰宅。
冷蔵庫に買ってきた物を入れ、二人でベッドの上に座った。
「なんかあっと言う間だよな。こんなにプライベートが充実してるって初めてかも」
天井を見上げながら彼がふと呟いた。
「そんな、大袈裟だよ」
そんな言葉をかけておきながらも、私もこの時間がとても幸せすぎて。
孝介から支配されていた時間がずっと前のように感じられた。
「私、夕ご飯の下準備してくるから、迅くんちょっと休んで?疲れているでしょ。運転もしてもらったし」
いろいろ作ってあげたいと思うけど、コンロが一つだし、古いアパートだからキッチンも広くはない。
何品か作るだけで結構時間がかかりそう。
「ありがとう。んー。そうだな。ちょっと横になる。何かあったら起こして?目が覚めたら美月が居なくなってるってこと、ないよな」
「一人でどこかに出かけたりしないし、大丈夫だよ」
ベッドに横になっている迅くんの髪の毛をサラっと撫でた。
髪質、柔らかいな。
私の様子にフッと笑い、彼は目を閉じた。
睫毛長いな、相変わらず綺麗な顔。
さて、喜んでもらえるようなご飯を作らなきゃ。
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