893人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
あれ?私……。
目覚めると、隣に迅くんが寝ていた。
そっか。昨日、あの後――。
記憶を辿ったらまた身体が反応してしまいそうだった。
今、何時?七時すぎ……?
ヤバい、彼は今日仕事だよね。起こさなきゃ。
「ねっ、迅くん起きてっ!!」
…・――――…・―――
それから1週間後――。
私は迅くんのアパートに引っ越し、彼と半同棲生活を送っている。
彼の希望通り、朝彼を起こし、朝食を食べてもらい、見送る。
帰宅したら夕ご飯を食べてもらい、別々の時間を過ごすこともあれば「美月と今日一緒に寝たい」と言われる時もあるため、そういう日は彼と一緒に過ごしている。
が、そんな時は大抵
「ちょっ!もっ……。」
激しく抱かれる夜になる。
仕事で疲れているはずなのに、なんでこんなに元気なの?
けれど「大好きだよ」そう言い合いながらの日々は、過去の辛い時間を消してくれるようだった。
「美月、明日からまたベガに出勤だけど。大丈夫そう?」
ベッドの中で彼が心配そうに訊ねてくれた。
「うん。大丈夫。皆さんには迷惑かけちゃったけど、良いメニューができるように頑張る」
引っ越しが終わった後は、時間もあったし、迅くんに協力してもらいながら自宅で料理の勉強もした。料理教室に通っていた時の知識も役に立ったから、複雑だったけど。
「なんかあったら言えよ?」
「うん。ありがとう」
ベガのみんなは快く受け入れてくれるだろうか。
九条グループとはもう関係なくなった私に。
次の日――。
深呼吸をし
「おはようございます。よろしくお願いします」
ベガのスタッフルームのドアを開けた。
そこには
「おはようございます。お久しぶりです!またよろしくお願いします」
そう明るく声をかけてくれる平野さんがいた。
他のスタッフさんたちも普通に挨拶をしてくれ、胸をなでおろす。
しかしそこには、一番心配だった藤原さんがいなかった。
「あの、藤原さんは?」
「ああ。遅番なんで。午後から出勤してくると思いますよ」
そっか、久しぶりだから時間がある時にきちんと挨拶しておきたかったな。
午前中は備品の在庫確認、食材の下準備などを手伝った。
迅くんに<普通にカフェのことを手伝いながら、試作を続けたい>そうお願いした。
腫れ物に触るような扱いじゃなく、スタッフとして手伝いたい部分もあることを伝えた。
彼は「わかった」とだけ返事をしてくれたけど、平野さんから指示を受ける内容が離婚する前とは違うから、迅くんが仕事内容を調整してくれたに違いない。
少しは役に立っているかな?
そう思っていた時、藤原さんがフロアーに入ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!