それぞれの行方

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 あれ?私……。  目覚めると、隣に迅くんが寝ていた。  そっか。昨日、あの後――。  記憶を辿ったらまた身体が反応してしまいそうだった。  今、何時?七時すぎ……?  ヤバい、彼は今日仕事だよね。起こさなきゃ。 「ねっ、迅くん起きてっ!!」 …・――――…・―――    それから1週間後――。  私は迅くんのアパートに引っ越し、彼と半同棲生活を送っている。  彼の希望通り、朝彼を起こし、朝食を食べてもらい、見送る。  帰宅したら夕ご飯を食べてもらい、別々の時間を過ごすこともあれば「美月と今日一緒に寝たい」と言われる時もあるため、そういう日は彼と一緒に過ごしている。  が、そんな時は大抵 「ちょっ!もっ……。」  激しく抱かれる夜になる。  仕事で疲れているはずなのに、なんでこんなに元気なの?  けれど「大好きだよ」そう言い合いながらの日々は、過去の辛い時間を消してくれるようだった。 「美月、明日からまたベガに出勤だけど。大丈夫そう?」  ベッドの中で彼が心配そうに訊ねてくれた。 「うん。大丈夫。皆さんには迷惑かけちゃったけど、良いメニューができるように頑張る」  引っ越しが終わった後は、時間もあったし、迅くんに協力してもらいながら自宅で料理の勉強もした。料理教室に通っていた時の知識も役に立ったから、複雑だったけど。 「なんかあったら言えよ?」 「うん。ありがとう」  ベガのみんなは快く受け入れてくれるだろうか。  九条グループとはもう関係なくなった私に。  次の日――。  深呼吸をし 「おはようございます。よろしくお願いします」  ベガのスタッフルームのドアを開けた。  そこには 「おはようございます。お久しぶりです!またよろしくお願いします」  そう明るく声をかけてくれる平野さんがいた。  他のスタッフさんたちも普通に挨拶をしてくれ、胸をなでおろす。  しかしそこには、一番心配だった藤原さんがいなかった。 「あの、藤原さんは?」 「ああ。遅番なんで。午後から出勤してくると思いますよ」  そっか、久しぶりだから時間がある時にきちんと挨拶しておきたかったな。    午前中は備品の在庫確認、食材の下準備などを手伝った。  迅くんに<普通にカフェのことを手伝いながら、試作を続けたい>そうお願いした。  腫れ物に触るような扱いじゃなく、スタッフとして手伝いたい部分もあることを伝えた。  彼は「わかった」とだけ返事をしてくれたけど、平野さんから指示を受ける内容が離婚する前とは違うから、迅くんが仕事内容を調整してくれたに違いない。  少しは役に立っているかな?  そう思っていた時、藤原さんがフロアーに入ってきた。
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