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「今日は俺が行けなくてごめん。怖かっただろ?」
孝介のことを言ってるんだ。
「ううん。亜蘭さんが来てくれたし、大丈夫だったよ」
ギュッと抱きついて離れない彼。
「ね、迅くん。お腹空いたでしょ?ご飯食べて」
背中をポンポンしながら声をかけると
「うん。ありがとう」
私から離れ
「シャワー先に浴びてくる。美月と話をしたいから、待っててくれる?」
そう言って、彼は浴室に向かった。
すぐ食べられるように夕ご飯を温め、待っているとシャワーを終えた彼が戻ってきた。
「いただきます」
そう言っていつものようにご飯を食べ始める。
「美味い!あぁ、マジ幸せ」
少し笑ってくれた迅くんの顔を見て、なんだかホッとした。
二人で食器を片づけた後、話を切り出された。
「美月、しばらくベガへの出勤は控えよう」
「えっ?」
急な話、予想もしていなかった内容に言葉を失う。
「今日みたいにもし孝介がまた美月に接触してきたら危ない。何をされるかわからない」
そうだけど……。
迅くんの言いたいことはわかる。
それにこの前みたいにお店の中まで入ってきて、スタッフさんに迷惑をかけるわけにもいかないよね。
でもいつになったら安全って言えるようになるの?
「俺の方から今日のことはあいつの父親、九条社長には伝えておく。あんな人通りの多い道の真ん中で大声出して騒がれて、もし通報されたら社長も困るだろうし。左遷の話は決定らしいから、あいつが東京から出るまでの間、しばらくは美月も気をつけていてほしい」
せっかくまたベガに行くことができると思ったのに。
役に立てることが見つかったと思った。
悲しかったけど、私が無理矢理出勤してスタッフさんたちに何か迷惑をかけてもイヤだ。
「うん。わかった。孝介が近くから居なくなるまで、ベガに行くのはやめるよ。行ったり、行かなかったりでベガの人たちにまた迷惑かけちゃったけど」
「それは美月が悪いことじゃないから。ベガのリーダーには俺の方から上手く説明しておく。孝介も引っ越したら忙しいだろうし、前みたいに社長のコネも使えなくなるから、仕事だって大変になるだろうし。俺たちのことなんて思い出すヒマもなくなる。それまで我慢だな。あー。本当にいつまでもネチネチしてきて嫌な性格だな、あいつ。自分の行いが悪いって認めたくないんだろうな」
はぁと迅くんは溜め息をついた。
「ごめん。迷惑かけて」
「美月は謝らなくていい。とりあえず、出かける時とか注意して。一応、な?」
「うん」
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