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「通報はしておきましたから。こんなことして、あの人。九条社長もしばらく忙しそうですね。大きなニュースになりそうですよ。それに、うちの会社も」
はぁぁぁと深く重い溜め息を亜蘭さんは吐く。
孝介は、周りの人に押さえられいる。
けれど迅くんが普通に立ち上がっているのを見て、目を見開き、驚いている顔をしたのがわかった。
「お前!!なんで!!?」
再び暴れそうになった孝介を周りの人が再度押さえつける。
気づけば、亜蘭さんも手伝っていた。
そんな孝介に迅くんは
「好都合だった。ありがとう」
私には向けない冷たい眼をしてそう言った。
間もなく、救急車と警察が駆けつけ、私たちは事情を説明した。
迅くんは救急車に乗って病院へ運ばれることに。
私も同乗することになり、引き続き亜蘭さんは警察に事情を説明していた。
病院で治療後、警察にはありのままの話をした。
その後、迅くんのアパートに帰宅し、今私は二人分の温かいお茶を淹れている。
迅くんは腹部と手のひらに刺し傷と切り傷。
軽傷とまではいかないけど、命に別状はない。
「また傷跡、残っちゃうかな。私のせいで……」
子どもの頃、助けてもらった時の傷は彼の腰に残っている。
たぶん一生消えることはない。
今日も私を庇ったから、また彼にケガをさせてしまった。
「何、暗い顔してんの?」
私の後ろに迅くんが立っていた。
「迅くん、立って大丈夫?」
「あぁ。痛み止め効いてるし。運動制限だけで、日常生活には問題ない程度だから大丈夫だよ」
「また、私のせいで迅くんにケガさせちゃったって……」
「なんだ。そんなこと?」
彼はギュッと私を後ろからハグした。
「そんなことって言い方……」
「美月は悪くない。それに避けようと思えば避けることができたし。あいつくらいなら俺一人でなんとかできた……」
「じゃあ、なんで刺されたの?」
「美月が心配してくれるかなって?」
はぁ!?なにその理由。
「心配するに決まってるじゃん!」
「あいつが俺を刺すことで、捕まるし。その方が今後安心かなって。それに、美月から何でもするって約束してもらえたし」
あの場でそんなこと考えてたの?
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