真実

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 情報?どこからそんな……。 「ねぇ。今日の話は本当?私がカフェメニューの監修をするって。説明なんて全く受けてないんだけど!」 「ホント。これからしばらく俺の会社が経営しているカフェで働いてもらう。新メニューに悩んでるって話は事実だしな。それに……。これで出かける理由ができただろ?」 「えっ?」 「これで俺が美月を呼び出しても、不自然ではないし……?さっき、連絡先も旦那の前で正式に交換しただろ」  彼の口角が少し上がった。  悪い顔。確かに仕事に行くって家を出ても、特別不自然じゃなきゃ怪しまれることもない。 「監修と偽って、また私を呼び出すの?」 「それが一番の目的だけど?監修はあくまでその次」  彼の返事は即答だった。    彼がチラッと時計を見た。 「もうこんな時間だな。今日は疲れただろ?早く休めよ」  そう言って玄関に向かった。  「待って!」  私は彼の後を追う。  すると彼が振り返り、私の両肩を掴んだ。 「明日の十六時。俺のアパートに来て?久し振りなんだ。覚悟しとけよ?」  唇が耳に当たるんじゃないかと思うような距離で囁かれた。 「えっ!ちょっと!」 「じゃあ、おやすみ」  玄関の扉がパタンと閉まった。 「なによ、それ……」    寝室に戻り、孝介の様子を確認する。  いびきをかいて寝ていた。  急展開すぎて、考えることが多すぎて……。頭がパンクしそう。  加賀宮さんと出逢ってから、そんなことが増えた。  シャワーを浴びた後、リビングのソファーで一人今日の出来事を振り返る。  加賀宮さんって何物なの?  やっぱり九条グループがお願いするほどの会社の社長だっていうことがわかった。それ以外何も……。  孝介の言葉を思い出した。洋服のサブスク、カフェ、BARの経営。  ネットで検索すれば、何か手がかりがあるかもしれない。  私は携帯を取り出し、彼の苗字と孝介が言ったワードを入れ、検索した。  すると――。 「あった!」  思わず声を出してしまった。  「加賀宮……(じん)……。代表取締役社長……。会社名は、シリウス」    私は、会社概要を食い入るように見た。  わかったことは、会社(シリウス)のこと。  私が知りたかった彼の情報については、名前くらいしかわからなかった。 「かがみや……。じん。かがみやじん。かがみやじん……」  彼は私を知っている。初対面ではないと言っていた。  小学校や中学校、高校、大学、同級生の名前や何か手がかりはないか一生懸命思い出す。  下の名前を聞いたら、わかると思ったのに。    加賀宮迅(かがみやじん)。  彼は一体、誰なんだろう――。
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