真実

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「今日、美和さん来ないから。これ、食費」  孝介に渡されたのはこの前と同じ千円札一枚。 「料理の勉強もしろよ?作っても良いけど、俺の分は要らないから」  私に返答する余裕を持たせず、玄関の扉がパタンと閉まった。  千円で何日間の食費だと考えているんだろう。  殴られなかっただけマシ……なのかな。 …―――…  そんなに日は経っていないはずなのに、昨日会ったばかりなのに、緊張してしまう。  加賀宮さんが呼んだタクシーに乗り、彼のアパートに向かっている。  なぜ十六時を指定したのかわからないが、午前中は仕事だったのだろう。  お義父さんに会うって言ってたし。  タクシーを降り、木造アパートの階段を上り、部屋のインターホンを鳴らした。  だけど、彼は出てこないから……。 <トントントン>    直接ドアをノックし  「私!開けて?」  そう声をかけた。  しばらくするとドアが開き――。 「お疲れ様」  ワイシャツ姿の加賀宮さんの姿が見えた。  「お邪魔します」  家の中に入る。  靴を脱ぎ、廊下に一歩入った時だった。  腕を引かれ、ギュッと抱きしめられる。 「ちょっと!」  あっ、良い匂いがする。  香水?シャンプー?どっちだろ。 「ベッド、行こう?」 「えっ」  一旦離され、腕を引かれ、ベッドへ座らされて――。 「ん……」  キスをされた。  次第に激しくなって、舌と舌が絡まる。 「んっ……んん」  彼はキスをしながら、私の洋服を脱がしていた。 「加賀宮……さ……ん。強引……」  いつも余裕そうな彼が、今日は焦っているような気がした。  ベッドに押し倒され、首筋に彼の唇が触れる。 「あっ……。待って……」  くすぐったい。  でも――。  彼の吐息と舌の感触にゾクゾクして――。 「んぁ……」  声が漏れてしまう。 「こっち向いて?」  彼の声に反応すると 「んっ……」  再び唇と唇が重なった。部屋にリップ音が響く。 「ねっ?どうしたの?」  彼に問いかけるも、何も答えてはくれない。 「後ろ向いて?」 「どうして?」 「いいから」  下着姿の私を強引にうつぶせにさせた。  首筋、背中にチュッと軽くキスをされる。 「あぁっ……」  彼の息が、唇が背中にあたり、ビクっと身体が反応してしまう。    彼の動きが一瞬止まった。 「ここ。どうしたの?痣になってるけど」  私の腰に彼の指先が触れた。  そこは……。
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