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あ……れ……?
私、寝ちゃったの?
目を開けると、加賀宮さんのベッドの中だった。
ちゃんと布団が掛けられてる。隣に彼は居なかった。
今、何時なんだろう?
彼の家の時計を見ると
「えっ!もう十九時過ぎてる!」
家に帰らなきゃ。孝介が帰って来ちゃう。
急いで帰宅する準備をしようとしたが――。
あっ、そうだった。
今日は実家に泊まるって言ってたっけ。
浮気相手の家か実家なのか、本当のことはわからないけど。
はぁと呼吸を整えた時だった。
「おはよ」
声がした方向を見ると、加賀宮さんが上半身裸で立っていた。
タオルで髪の毛を拭いている。
シャワー浴びたのかな。
「あの……。もう私には用はないんでしょ?帰るね」
ベッドから降りようとしたが
「ダメ。まだ帰さない。聞きたいことあるし……。それに今日、孝介帰って来ないと思うよ?」
まただ。どうしてそんなことまで知っているんだろう。
彼が納得する返事をしなきゃ、いつまでも帰してくれないような気がした。
「なに?私に聞きたいことって」
「なんで俺の名前知ってんの?ま、会社名でネット検索したら普通に出てくるんだけど」
名前?
あぁ、さっき下の名前で呼んだから気になってるのかな。
先程までの情事を思い出し、一瞬恥ずかしくなったが、加賀宮さんも今は普通に話をしてくれそうな雰囲気だ。
「そう。ネットで調べたの。あなたが家に来た時に、会社のことを孝介が話してたでしょ。だからそれを手がかりに……。加賀宮さんは私のことを昔から知っているみたいだけど、私はあなたと接した覚えがないの。あなたはどこで私のことを知ったとか、全然話してくれないし。私だって過去にあなたに会っているのなら、思い出したい。調べたのは、少しでもあなたのことを知りたかったから」
ただ単純な理由だった。
下の名前を聞けば、何か手がかりがあるような気がしたから。
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