889人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
「まぁ、隠してたって孝介と関わることになった以上、いつかはバレると思ってたから。んで、俺のこと何かわかったの?」
髪の毛を拭いていたタオルをポイっと洗濯カゴの中に投げながら、彼は私に問いかけた。
「……。わからない」
正直に答えるしかないよね。
変な嘘をついても、この人には通用しなさそうだし。
「そっか」
彼はそう一言呟いた後
「髪の毛、ドライヤーかけてくる」
そう言って洗面台へと向かった。
今、一瞬、とても悲しそうな顔してた。
私だって過去にあなたと出逢っているのなら、思い出したいよ。
どうして教えてくれないの?
しばらくして――。
彼が戻って来た。
あれ?私服?
黒いTシャツにジーンズ。
これからどこかに出かけるのだろうか。
「美月。出かけるよ?準備して?」
「えっ!?どこに?」
「腹減った。飯食べに行こ?」
全く予想していなかった彼の誘い。
この状況でよくそんなこと言えるわね。
私、下着姿なんですけど。
シャワーだって浴びたいし、それに……。
「無理。行かない」
「なんで?」
「どうしても!!」
「命令って言っても?」
命令……。
そう、彼と私の契約において、彼の命令は絶対。
だけど――。
「シャワーだって浴びたいし、下着が濡れちゃってて気持ち悪いの!もちろん、着替えなんて持ってきてないし。こんなんで出かけたくない!」
なんでこんなこと素直にカミングアウトしてるんだろ。
さすがの彼だって引くよね。
いっそのこと、私と話したくないと思うくらい、嫌いになってくれれば良いのに。
私の強めの発言に彼は
「ハハッ」
声を出して笑った。
「っ……なんだよ。それ。そんな理由かよっ」
アハハハと彼はまだ笑っている。
そんなに面白いこと?
「マジヤバい。ツボった……」
こんなに笑うことができる人なんだ。
なんか人間離れしているような人だと思ってたけど。感情も読めないし。
「わかったよ。でも腹減ったし……。そうだな。デリバリーなら良いだろ?」
どうして加賀宮さんと食事なんか。
でも……。私もお腹空いたかも。
彼の笑っているところ見たらなんか安心して。なんて単純な思考なんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!