いま、なんつった?!

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いま、なんつった?!

「お前が好きだ。付き合ってくれ」 密かに慕っていた男友達から告白された。 好きな人に好きって言われて断るバカはいない。答えは勿論イエスだった。 「え、もう一度言ってくれる?」 向かいでカップを傾けて座る男、先日私の彼氏になったばかりの男が理解し難いことを言った気がして聞き返す。 「だからさ、サークルの後輩が気になっているんだよね」 二度目も一語一句変わりない言葉に目が点になる。 ……告白してきたの、そっちだよね? 私の記憶違い、なんてことはないよね? え、だったら心変わり?! もう? 早くない?! 無言で静かに脳内整理を終えた私はひと息吐き出した後、彼氏の言い分を受け止めた。 「そう……じゃあ私とは別れるんだね」 いままでありがとう、というほどカレカノ歴は短い。ショックはショックだが、短いからこそ泣き叫んで縋るようなみっともない姿を見せずに済むのは助かった。 恋心は持っていたけど元は友達同士。 意見を尊重するのも、幸せを願ってあげれるのも、想いの強さや培ってきた絆ゆえだ。 さようなら、というのもおかしい。 またね、も別れには軽い感じがする。 迷った末、緩く手を振って席を立つことにした。 「どこ行くんだよ」 「どこって……帰るんだけど」 「なんでだよ。来たばっかじゃん」 「そうだけど、別れたんだから一緒にいる意味ないでしょう?」 本日はカレカノとしてデートの予定だった。 つい今しがたカレカノが終了したのに、そのまま仲良く茶を飲むほど私の神経は図太くない、と至極真っ当な事を言ってみれば。 「は? 別れるってなに。俺、そんなつもりはないんだけど」 と、またしても理解不能な返事が来た。 「えーーっと……気になる後輩がいるって言わなかったっけ?」 「言ったよ」 「つまりその子のこと好き……なんだよね?」 「んーー、まあ、好意はあるな」 「ということは、私とのお付き合いは貴方の為にも良くないでしょ」 「なんで? 俺、お前も好きだよ」 満面の笑みで言い切るけれど。 お前「も」ってなんだ、と不快感しかない。 「私も好きだから別れないってこと?」 「うん」 当然とばかりに胸を張られた。 うんじゃねぇだろ!! 即答すんな!! 常識皆無、的外れで能天気な彼氏の言動や態度に、だんだんと腹が立ってきた。 「例えばだけど、その後輩に好きって言われたらどうすんの」 「例えでも嬉しいな」 「ニヤつくなっ! 付き合うつもりがあるのか聞いてんの」 「そりゃ付き合うよ。当たり前じゃん」 告白され有頂天になっていた先日の自分を殴りたい。悪びれもせず答えた彼氏の本性を見抜けなかった自分が恥ずかしい。 「あんたの言い分を纏めると、その子と付き合いながら私とも付き合うんだ」 「そうなるね」 「なるね、じゃないから。私はそんな付き合いはイヤ。ノーサンキューよ!」 感情のままテーブルに拳を叩き付けた。 コーヒーが吹きこぼれる。 周囲の視線も痛い。 でも構うもんか。 あっちにふらふら、こっちにふらふらする多情な男なんて願い下げだ!!
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