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052:ダンジョン探索の、お誘い
「いや。すまんな。綺麗な女性が居たものだから、つい」
そう言ってイケメンが笑う。場所は工房にある小さなキッチンでの会話だ。
「えぇっと、それで。何か用があってきたんじゃ?」
「あぁ、そうだった。実はだなダンジョン攻略を手伝ってほしいんだ」
「俺にですか?」
「そう。君にだ」
「俺。自慢じゃないけど貧弱さには自信がありますよ」
そう言って俺は袖をまくって力こぶを作る。するとジェサライムは大笑い。
「あっはっは。それは君の体を見れば分かる。そっちは期待していないよ」
ジェサライムは静かに言った。
「俺ね。これでも結構な腕の魔法使いなんだ」
「はぁ……」
「それでね。ジン。君と君が信頼する冒険者と俺で組んでダンジョン攻略をしようじゃないかって話さ」
「あの、何で俺なんでしょうか?」
「それは君が世界でも有数の錬金術師だからさ。どうだい? 俺と組もうじゃないか」
ジェサライムはそう言って手を差し出した。俺は完全に戸惑ってしまう。
「バックアップぐらいしか出来ませんよ?」
「それで充分さ」
まぁ一度はダンジョンに入っては見たほうが良いとは思っていたから渡りに船と言えばそうなるか。ダンジョンで何が採れるのかを知る良い機会だ。
「分かりました。それじゃあ俺の最も信頼する冒険者に指名依頼を出します」
「あぁ。そうしてくれ。費用は俺が受け持とう」
こうして、俺はジェサライムと組むことになった。
※
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指名依頼を出すのは『ウィンド』だ。カイトさんをリーダーにゲーネッツとアヤさんのパーティ。 三人共が前衛で俺とジェサライムさんが後衛ということになる。
ゲーネッツが「よぉジン」と言って近づいてきた。
「やぁ、ゲーネッツ。ゴメンね。突然」
「いいさ。正直あのダンジョンな。凶悪すぎて困っていたんだ。それで? 腕のいい魔法使いってのはアンタか?」
そう言ってジェサライムに話しかけるゲーネッツ。
「あぁ。ジェサライムだ。火の魔法が得意だ。よろしく」
「どの程度、使えるんだ?」
「ファイアーボールぐらいなら一日で十数発は使える。ファイアアローも、かなりの角度と速度があるぜ」
「はっは。まぁ口では何とでも言えるさ。実力の程は後でたっぷりと見せてくれるんだろ?」
「そのつもりだ」
「よろしくな」
カイトとアヤさんの姿が見えない。
「二人は?」
するとゲーネッツ。
「あぁ。荷物を買い集めているよ」
「俺が準備するのに」
「錬金道具は任せるが、それ以外の基本的な道具がな」
「あぁ。なるほど」
「それでジン。いちおう聞くが、あの極悪な魔導書は持っていくのか?」
「ウン。いちおうね」
「ふむ。ならまぁ問題ないか」
こうして俺たちのダンジョン探索が始まろうとしていた。
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