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053:出発
ダンジョン探索への準備を滞りなく終わった。
現状用意できる最高の回復薬である3等級ポーションにランタン。体内に入った異物を除去するポーション。これは高級品だが今回は用意した。攻撃アイテムに魔導書も持った。時間増幅器も所持する。他にも簡易結界石にマジックボトルも用意した。
現状でできる最高を求めて。
ダンジョン探索するにも現地に到着しないと駄目だ。現状ではダンジョンの入口に行くのにも大変な思いをする。そうダンジョンは大森林の奥にあるのだ。
ちなみにダンジョンには闇のダンジョンと言う名称がついている。真っ暗なダンジョンらしいからな。そのまんまだな。
店の前。大森林の手前でサリナと気軽に行ってきますの挨拶。
「それじゃあ、行ってくる」
彼女に、そう言って店を任せる。その横でジェサライムがエステラと話をしている。
「あのね。ジェサライム様? 私。これでも貴族の娘なんですよ? 軽々しく付き合うわけにはいかないんです」
エステラが、やんわりと断っている。
「大丈夫だよ。僕はこれでも歴とした貴族だ。必ず君を迎えに来るから待っててね」
するとエステラは苦笑い。
「はいはい。はぁ。もう……」
そう言って困った顔を俺に向ける。いや。そんな顔を向けられてもな……
俺の援護がない事を悟ったのか再び盛大に溜息。エステラが呆れたようにジェサライムに言い聞かせている。
「詐欺師のジェサライム様。お気をつけていってらっしゃませ」
「あっはっは。詐欺師とは酷い。本当のことなのに」
まぁ彼が何者かは知らないが、凄腕の魔法使いであるのは事実だ。
実際に魔法を撃ってもらって確認をした。呆れるほど良い腕をしていたのだ。ゲーネッツもカイトさんもアヤさんも驚いていた。俺はそんなジェサライムの腕を引く。
「ほら。エステラも困っているようだし、もう行くぞ」
「あぁ。そうだね。それじゃあね。子猫ちゃん。また来るよ」
そう言ってジェサライムが投げキッス。それを叩き落とす仕草をした後でエステラが苦笑いで、お見送りをしてくれたのだった。
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春の大森林は生命力で溢れている。色とりどりの花が咲き、心地良い日差しを精一杯に取り込んでいるようだ。鳥の鳴き声がそこかしこに溢れているのも特徴だ。
魔物の気配が薄く、そのかわりと言わんばかりに木々の生命力と動物の活力で、何だかこっちまで浮足立ってくる気分だ。
そんな森を進む。途中途中で休憩を入れながら。
まぁそのほとんどが俺を気遣ってのことなのだが……
「栄養ドリンクを多めに持ってきてよかった」
ゲーネッツが呆れている。
「まだダンジョンに入っても居ねぇのに……道はまだまだ先だぞ?」
「まぁいざとなったら途中で材料を見つけて作るからさ」
「どんだけ飲む気だよ」
そんな感じで森を進むのだった。
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