055:ダンジョンの入口

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055:ダンジョンの入口

 森を奥へ奥へと進んだ先。そこには人が集まっていた。 「何をやってるの?」  俺の質問にゲーネッツが答える。 「商人だ。出入り口前で商売をやっている。最近になって屋台も出来たんだぞ?」  うへぇ。商魂たくましいね。村で店をやっているだけじゃ分からない光景が広がっていた。森の中で、まるでパーティをやっているかのような光景。 「少し休んでいこう」  カイトさんの言葉に大いに甘えて、俺もその一員になることに。 「ふぅ。疲れたぁ」  そう言いながら、屋台の前を陣取って、さっそく飲み物を飲む。わずかに果実の味がする。肉はウサギの肉だ。串焼きにされている。  俺たちはそこで一休み。その間に一度、ダンジョンの入口を見てみた。そこには地面にポッカリと大きな穴が空いていた。緩やかな傾斜がついた洞穴だ。 「うわぁ……」  俺は思わず声を漏らす。闇に飲み込まれていきそうな。まるで生き物が口を開けて待っているかのような。そんな光景。 「皆ってここの中に入ってるの?」  ゲーネッツに尋ねると「おうよ」と軽快な答えが返ってきた。 「凄いね。いや、マジで。凄いわ……」  どう見ても地獄への入り口です。本当にありがとうございました。  俺の感想にジェサライムが言った。 「ダンジョンってのは大なり小なり、こんな物だよ」  その後も、しばらく休憩していると一組の男たちに声をかけられた。 「よぉゲーネッツ」 「ん? おう。お前らも来てたのか?」 「おう。まぁな」  そう言って俺を見る。 「その生白いのは仲間か?」 「あぁ。近くの村で錬金術師をしているジンだ」 「あぁ。錬金術師。どうりで」  俺は自分の腕に力こぶを作ってみる。 「これでも増えたんだけどな」  するとゲーネッツ。 「それでか?」 「うん」 「はっはっは」  俺とゲーネッツの会話を聞いて男たちが不安そうに尋ねてきた。 「おいおい。素人を連れて入るのか? 大丈夫かよ?」  そう言って笑う。  ゲーネッツも苦笑い。 「まぁ最悪。ヤバいと判断したら逃げ帰るさ」 「そうしろ。ここのダンジョンはヤバい。激ヤバだ」 「だな。まぁいけるだけ行くさ。ありがとうな」 「おう。じゃあ、そろそろ行くわ」  そう言って男たちが奥へと入っていく。ジェサライムも立ち上がって言った。 「俺たちも、そろそろ行こうか?」  そう言って、カイトやゲーネッツ。アヤさんも立ち上がって普通に入っていく。腰にはランタンが灯され、手には松明の炎が。 「明かりが多いね?」  カイトさんが答える。 「入れば分かるが、中はとにかく暗いんだ。ランタンだけだと心もとない。松明だけだと手が塞がるんだ。そこでジン君だ」 「俺?」 「そう。ダンジョンを少しでも明るくする方法を考えて欲しい」 「あぁ、なるほど。分かりました」  何かあったかな。そんな事を考えながらダンジョンの洞穴の中へと入っていく。  途中。他の冒険者たちに追い抜かれた。 「皆、普通に入っていくね」  ゲーネッツが笑う。 「そりゃそうだろ。冒険者だぞ? 冒険しないで何をするんだ?」  それはそうだけどさ。  なんだか、冒険者って凄いなと思った。
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