109人が本棚に入れています
本棚に追加
055:ダンジョンの入口
森を奥へ奥へと進んだ先。そこには人が集まっていた。
「何をやってるの?」
俺の質問にゲーネッツが答える。
「商人だ。出入り口前で商売をやっている。最近になって屋台も出来たんだぞ?」
うへぇ。商魂たくましいね。村で店をやっているだけじゃ分からない光景が広がっていた。森の中で、まるでパーティをやっているかのような光景。
「少し休んでいこう」
カイトさんの言葉に大いに甘えて、俺もその一員になることに。
「ふぅ。疲れたぁ」
そう言いながら、屋台の前を陣取って、さっそく飲み物を飲む。わずかに果実の味がする。肉はウサギの肉だ。串焼きにされている。
俺たちはそこで一休み。その間に一度、ダンジョンの入口を見てみた。そこには地面にポッカリと大きな穴が空いていた。緩やかな傾斜がついた洞穴だ。
「うわぁ……」
俺は思わず声を漏らす。闇に飲み込まれていきそうな。まるで生き物が口を開けて待っているかのような。そんな光景。
「皆ってここの中に入ってるの?」
ゲーネッツに尋ねると「おうよ」と軽快な答えが返ってきた。
「凄いね。いや、マジで。凄いわ……」
どう見ても地獄への入り口です。本当にありがとうございました。
俺の感想にジェサライムが言った。
「ダンジョンってのは大なり小なり、こんな物だよ」
その後も、しばらく休憩していると一組の男たちに声をかけられた。
「よぉゲーネッツ」
「ん? おう。お前らも来てたのか?」
「おう。まぁな」
そう言って俺を見る。
「その生白いのは仲間か?」
「あぁ。近くの村で錬金術師をしているジンだ」
「あぁ。錬金術師。どうりで」
俺は自分の腕に力こぶを作ってみる。
「これでも増えたんだけどな」
するとゲーネッツ。
「それでか?」
「うん」
「はっはっは」
俺とゲーネッツの会話を聞いて男たちが不安そうに尋ねてきた。
「おいおい。素人を連れて入るのか? 大丈夫かよ?」
そう言って笑う。
ゲーネッツも苦笑い。
「まぁ最悪。ヤバいと判断したら逃げ帰るさ」
「そうしろ。ここのダンジョンはヤバい。激ヤバだ」
「だな。まぁいけるだけ行くさ。ありがとうな」
「おう。じゃあ、そろそろ行くわ」
そう言って男たちが奥へと入っていく。ジェサライムも立ち上がって言った。
「俺たちも、そろそろ行こうか?」
そう言って、カイトやゲーネッツ。アヤさんも立ち上がって普通に入っていく。腰にはランタンが灯され、手には松明の炎が。
「明かりが多いね?」
カイトさんが答える。
「入れば分かるが、中はとにかく暗いんだ。ランタンだけだと心もとない。松明だけだと手が塞がるんだ。そこでジン君だ」
「俺?」
「そう。ダンジョンを少しでも明るくする方法を考えて欲しい」
「あぁ、なるほど。分かりました」
何かあったかな。そんな事を考えながらダンジョンの洞穴の中へと入っていく。
途中。他の冒険者たちに追い抜かれた。
「皆、普通に入っていくね」
ゲーネッツが笑う。
「そりゃそうだろ。冒険者だぞ? 冒険しないで何をするんだ?」
それはそうだけどさ。
なんだか、冒険者って凄いなと思った。
最初のコメントを投稿しよう!