060:帰りはこちら

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060:帰りはこちら

 闇の中に手が見えた。男性の手だ。俺は無意識に、その手を掴む。すると意識を叩き起こされた。 「ジン! 無事か!」  なっ、誰!  眠い目を無理やり開いて体を起こす。そこにはゲーネッツが居た。 「ゲーネッツ!」 「おう。俺だ」  急いで辺りを見回す。そこは散々たる有様だった。ブラックスライムの黒い粘液が辺り一帯に飛び散っている状態だ。 「助かっ、た?」  するとゲーネッツが笑いながら俺の肩を叩いた。 「おう! そうだ。助かったんだ。よくやった!」 「みんなは!」 「無事だ。大丈夫。全員無事だ」  そう言って俺の頭をワシワシと撫でた。 「マジでよくやった!」  はは。そうか。みんな無事か……  体から力が抜ける。 「おっと。まだ安心するの早いぞ」  そう言って俺を立たせる。 「落とし穴に落ちたのは覚えているか?」  あぁそうか。そこから出なきゃいけないのか。 「どこかに道はないの?」 「まだ分からん。今、皆で手分けして探している所だ」  するとジェサライムが皆を呼ぶ声がした。 「おーい。こっちだ」  呼ばれた方へ行ってみれば、そこには青い石碑が立っていた。 「出口……」  はは。安心したら足が震えだしてきた。膝が笑ってる。そんな俺にプレゼントが有った。 「そうだ。ジン。これ」  アヤさんにジャラジャラと石を渡された。それを確認すると大量の魔石だ。それも全部が闇の魔石。俺はそれを鑑定してみる。どうやら一個の魔石が砕けた後らしい。魔石は高品質で均一な状態だ。 「凄い……」  するとゲーネッツ。 「おう。とにかく今は帰るぞ。詳しくは家に帰ってからにしてくれ。俺は正直もう帰りてぇ」  皆の顔を見ると疲労でフラフラな状態だ。 「うん。帰ろう」  こうして俺たちのダンジョン攻略はいちおう終わった。ただ今回、倒したブラックスライムはダンジョンを守護する言われるボスですらない。あくまで罠の一つを攻略したに過ぎないのだ。  奥には何が住んでいるのか。  というかこのダンジョン。本当に攻略できるのだろうか?  まぁとりあえず、俺に出来るのはこの経験を通してダンジョンの攻略に必要なアイテムを作ることだけだ。兵器がどうのこうのと言っていられないな。  爆発系のアイテムも作ろう。光蟲と光り苔もつくって。それが少しでもダンジョン攻略の足しになればいいなと願って帰路につくのだった。
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