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061:エピローグ
人間の住む世界とは何と穏やかで心地が良いことか。
ダンジョンに潜って帰って来てからこっち。俺は忙しい毎日を送っていた。その最たることが結婚だ。
俺と、成人したばかりのサリナの。
死にかけたことで、ちょっと心境に変化があった。人間いつ死ぬかわからないのだ。ならもう。日々を後悔しないように生きないといけない。死の際に見た後悔を現実にしないために。
今。俺の隣には惚れた女性が座っている。彼女の唇には俺が初めて彼女に贈った紅が差してある。この日のために取っておいたのだという。もっと良いものを贈ろうかと言ったが、これが良いという。
それが何だか嬉しくて俺も思わず顔が緩んでしまう。俺が初めて彼女に贈った物が彼女を輝かせていることが誇らしい。こうやって小さな幸せを積み上げていくことが結婚なのだそうだ。俺のマブダチがそう人伝に聞いて俺に話していたな。
結婚は始まりだ。終わりじゃない。
一つのケジメではあるけどな。
俺の錬金術師としての物語も始まったばかりだ。
でも、この物語はここで閉じようと思う。
ダラダラ続けるのは趣味じゃないから。
じゃあな。
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