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3.始まるまで。
タモツが自宅から徒歩三分程度の公園への道のりを、固く祈りながら早足に進んでいた。
(頼む!ウキョウよ、来ないでくれ!)
そこでタモツは、誘われた時のウキョウの顔を今一度思い出してみることに。オリバーの嬉しそうな顔とそれを裏切りたくないチナミの指示を受けたヒカが、消しゴムを刺すのに飽きて鉛筆を机に立て始めたウキョウに近づいた。
タモツたちからはウキョウの表情がヒカによって隠れて見えない。タモツは教室のドアに近づき、見える位置に移動してその様子をじっと窺う。
ヒカの小さくて聞き取れない声にウキョウは初め、不思議そうに小首を傾げていた。聞かずとも聞こえる「何言ってんだ?」というあの顔であった。
ここでヒカが怖じ気付いて戻って来たなら、タモツは「無理に誘わなくていいじゃん」と切り出して終わらせるつもりだった。
しかし、ヒカは引かなかった。相手がウキョウだったからかもしれない。
彼女は日頃、学級委員長として何かと孤立しているウキョウのことを気にしていた。よって、これもいい機会だと考えていた。
「ウキョウ君、だから、あのね。放課後にタッチ鬼するんだけど、一緒にしませんか?」
今度はその誘う言葉がはっきりと聞こえた。
「……うん」
「うっぇ!?いいのかよ―――ッ!?」
タモツは半ば反射的に叫んでしまった。
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