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精神科閉鎖病棟、退院
病院を出ると、母は「喫茶店が近くにあったから入ろう」と私に言った。
お願いをするような響きを含んだ声で、「何か食べて」と言った。
私は、入院中一度も食べ物を口にしなかった。
まあ、元々東京にいた間は物はあまり食べなかったが。
喫茶店では私はパスタを頼み、母は、紅茶を頼んだ。
パスタをモソモソと食べる私を見て、母はただただ何度も「ごめん」と言う。
何がそんなに「ごめん」なのだろう。
何故そんなに謝るのだろう。
精神状態が良いとは思えない私を東京に一人で出したから?
それとも幼い頃の家庭環境があまり良くなかったことに対して?
私を産んだこと自体に対する「ごめん」だったのかもしれない、とも思った。
自分に「ごめん」と言っているのではないだろうか。
母だってこんなことになるとは思っていなかっただろう。
ごめん、は私の方だ。
こんな、バカな、気の狂った人間が産まれて来てしまって、母の人生をめちゃくちゃにしてしまった。
ごめん、でも私は、結局死ねなかったんだよ。
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