精神科閉鎖病棟入院6

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精神科閉鎖病棟入院6

翌日、朝食が終わると、私は忙しそうに廊下を行ったり来たりする看護師さんに話しかけた。 とても嫌そうにされた。 と言うか、基本的にこの病院で私に対応してくれた看護師さんは皆嫌そうだった。(煙草下さいとか、水下さいとか) 自殺未遂で救急車で運ばれて来たような自殺未遂メンヘラ野郎である精神病患者は、そのように扱われるのだな、とぼんやりと思ったものだ。 「私は病院を退院したいのですが、医師にそのお願いする時間をとってもらえませんか?」と聞いてみた。 その看護師さんは「考えておきます」とだけ言うととっとと行ってしまった。 なので、次はナースステーションに行き、これまた忙しそうな看護師さんに「電話を使いたいので、私の財布を少しの間だけ返してもらってもいいですか?」と聞いた。 そのお願いは認められたが、財布は返してもらえず、財布の中から10円玉と100円玉だけを数枚渡された。 そのお金で私は実家に電話をかけた。 父はもう仕事に行っているはずの時間だ、多分母が出るだろうと思っていた。 その思惑通り、電話には母が出た。 「ごめんなさい。どこまで知ってる?」と聞くと、母は泣き始めたようだった。 とても気まずかった。 「私はもう病院を出たい。その為には家族が迎えに来なければならないらしい」と言うことを伝えた。 母親は悩んでいるようだった。 これを機に私に治って欲しいと思っていたのか、父になんと言って東京のこの精神科まで私を迎えに来ようか悩んだのかもしれない。 10円玉の繋ぐ時間がもう無くなってしまう、電話が切れそうになった、その最後の一瞬に、私は「迎えに来る時は私の吸っている煙草を買って来て」と頼んだ。
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